国内の定置用蓄電池市場は2017年に2倍、2020年には5.5倍へ:蓄電・発電機器
調査会社の矢野経済研究所は、国内の定置用蓄電池市場の調査を実施し、その結果を発表した。2015年の定置用蓄電池市場は58万1491kWhで、2017年には119万5708kWhまで成長する見込みだという。
矢野経済研究所が行った今回の調査は2015年5〜9月に、定置用蓄電池(ESS)関連メーカーや蓄電システム関連企業に対し、専門研究員が文献調査とヒアリングによって行った。対象とした定置用蓄電池は、鉛蓄電池、リチウムイオン電池、ニッケル水素電池、レドックスフロー電池、NaS電池としている。
調査結果によると2015年の定置用蓄電池の国内市場規模(メーカー出荷容量ベース)は、前年比194.1%の58万1491kWh(キロワット時)となる見込みだという。利用用途としては、住宅用蓄電池が5割以上と最も高い比率を占め、市場のけん引役になっている。
住宅用蓄電池関連企業は現在、太陽光発電(PV)とのセット販売や、固定価格買取制度(FIT)の契約期間が終了する既設PVユーザーなどへの提案を積極的に進めており、これらのことから住宅向けの市場が急拡大している。補助金(定置用リチウムイオン蓄電池導入促進対策事業費補助金)の受付が終了したことから、2016年は成長率が鈍化する可能性もあるが、FITの10年間の契約期間終了を見据えた提案が2019年頃から始まることから、引き続き高い成長率を維持する見込みだ。
住宅用以外では、電力系統用や企業・業務用が着実な伸びをするとし、2017年の国内市場規模は119万5708kWhまで拡大すると予測している。さらに2020年までには住宅用の設置がさらに拡大し、330万6600kWhまで市場は拡大する見込みだ(図1)。
引き続き住宅用が主役
今後の用途を見てみると、住宅用蓄電池が今後も市場成長のけん引役となる見込み。これまで住宅用蓄電池は「非常用の備え」が導入の主目的となっていたが、今後は「電力を自家消費するためのツール」としての蓄電池需要が高まると予測する。さらに、PV買取価格の下落傾向、電気料金の上昇傾向も需要を後押しする。
住宅用以外では、新電力事業者の電力サービスと組み合わせた蓄電池需要が立ち上がると予測。関連して企業や業務用において工場やビルなどの電力大口需要家での本格的な蓄電池需要も生まれてくる。
電力系統用では出力安定化目的での蓄電池導入が加速。既に民間発電事業者でも導入するケースが出始めており、2016年以降需要として立ち上がる見込みだ。その他、発電所や変電所への導入、離島などマイクログリッドシステムでの導入が実証実験ベースで進むと予測する(図2)。
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