スペインの電力系統安定化に高サイクル寿命の蓄電池システムが貢献:蓄電・発電機器
東芝はスペイン・マドリッド州のアルカラ・デ・エナレス市で、スペインの電力会社ガス・ナチュラル・フェノーサ社(GNF社)と共同で、GNF社の商用電力系統を使用した蓄電池システムの実証実験をこのほど開始した。
今回の実証実験は新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)が公募した「安全・低コスト大規模蓄電システム技術開発」に採択された「系統安定化用の低コスト高出力システムの技術開発」プロジェクトによるもの。東芝とGNF社が2013年12月に共同契約を締結していた。
実証実験では、同市内の変電所に東芝のリチウムイオン「SCiB」を搭載した可搬式蓄電池システム(出力500kW、容量776kWh)を設置する。変電所が供給する電力需要の変動を蓄電池システムの充放電によって平滑化することにより、一時的な電力需要の増加に対しても変電所の配電能力を超えないように抑制するなど配電系統の安定化への貢献効果を検証する(図1)。
蓄電池システムに搭載された二次電池のSCiBは、チタン酸リチウムを使用することで高い安全性を確保しながら、1万回を超えるサイクル寿命、室温で電池容量の80%以上を6分間で充電可能にした急速充電性能、高出力性能、寒冷地(マイナス30度)でも使用可能な低温性能などの優れた特性を持っている。
スペインでは再生可能エネルギー比率が30%を超え、不安定な系統が課題となっており、需要変動に合わせた安定した系統構築のニーズが高まっている。このニーズに対応するため、東芝とGNF社は2017年までに実証実験を継続し、さらなる技術改良を進めていく。
東芝はこれまでも米国、英国、イタリアなど海外で電力の安定供給に向けた蓄電池システムを納入した実績がある。同社は今後も電力供給の安定化を通じた再生可能エネルギーの導入促進へ貢献することを目指して、大規模蓄電池事業のグローバル展開を進める方針だ。
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