再生可能エネルギーの電力買取量、前年比60%増の伸び:自然エネルギー
固定価格買取制度で買い取った電力が順調に増加している。6月に前年比で60%の大きな伸びを記録して、特に非住宅用の太陽光が2倍に拡大した。年間の買取量は電力会社の発電電力量の5%を占める勢いだ。その一方で新たに認定を受ける発電設備の規模は伸び悩んでいる。
2015年6月は固定価格買取制度の最初の3年間が終了する節目の月にあたる。資源エネルギー庁がまとめた6月の導入・買取・認定状況を見ると、制度の現状が見事に表れている。新たに運転を開始した発電設備は74万kW(キロワット)にのぼり、着実に拡大した(図1)。そのうち62万kWは非住宅用の太陽光で、規模の大きいメガソーラーを中心に全国各地で続々と稼働を始めたことがうかがえる
図1 固定価格買取制度による再生可能エネルギーの導入・買取・認定状況(2015年6月末。画像をクリックすると拡大)。各欄の下段の数字は前月比。バイオマスは燃料に占めるバイオマスの比率を反映。出典:資源エネルギー庁
一方で認定を受けた発電設備は12万kWにとどまり、2014年度までの勢いは感じられない。非住宅用の太陽光は過去の認定分の取り消しも影響して、5月に続いてマイナスになった。認定量が最も大きく増えたのはバイオマスで、1カ月間に24万kWの発電設備が認定を受けている。「一般木質・農作物残さ」を燃料に利用するバイオマスが13万kW、「未利用木質」も5万kWの増加で、木質系の伸びが著しい。
運転を開始する発電設備の増加に伴って、電力会社などが買い取った再生可能エネルギーの電力量は6月の1カ月間で37億kWh(キロワット時)に達した。天候の影響で太陽光の買取量が5月と比べて少なかったものの、全体では1年前の6月から60%も伸びている(図2)。
このペースで拡大していくと、2015年度の年間買取量は450億kWh程度まで拡大する見通しだ。電力会社が2014年度に発電した電力量は他社からの受電分を含めて8938億kWhだった。2015年度も同様の電力量を想定すると、固定価格買取制度による電力が5%を占めることになる。
同時に買取金額も大幅に増えて、年間では2014年度の1兆円強から2015年度には1兆5000億円を超えることが確実である。電力1kWhあたり30円を上回る水準が続く。当面は電気料金に上乗せする賦課金が増えるが、一方で火力発電の減少と化石燃料の価格低下によって燃料費の調整額が減っている。2016年4月から小売全面自由化の効果が加われば、国民の負担も軽減する。
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