太陽光発電の接続可能量が2種類に、原子力の再稼働を待つ姿勢は変えず:法制度・規制(2/2 ページ)
2015年1月に始まった再生可能エネルギーの接続に関する新ルールで、地域ごとに「接続可能量」が決められた。実態は電力会社が太陽光発電の導入量を抑えて原子力の再稼働に備えるための対策だ。政府は接続可能量を定期的に見直すとしていた当初の方針を転換して2種類の算出方法に変更する。
「年度算定値」で接続可能量を増やす
しかも「30日等出力制御枠」は今後も変更しない見通しだ。電力会社の電源構成に大きな変化があって、しかも接続申込量が超過していないことが見直しの条件になっている(図3)。すでに接続申込量が超過している北海道・東北・九州では、たとえ原子力発電所の廃止が決まって電源構成に変化が生じても見直さない。
資源エネルギー庁は接続可能量に基づく発電設備の出力制御ルールを2015年1月に導入した。導入時には接続可能量を定期的に見直すことを表明していたが、1年も経たずに方針を変更することになる。新たに2種類の接続可能量を算出する理由として、「接続可能量を超過した場合でも、無制限・無補償の出力制御のもとで接続が可能であるにもかかわらず、接続が不可能という誤解を生じさせる恐れがある」と説明している。
実態に近い「年度算定値」で接続可能量を増やすことができれば、事業者の導入意欲を高められるとの発想だ。各電力会社は政府の方針に従って、「2015年度算定値」を年度内に公表することになる。2種類の接続可能量にどの程度の差が出るかは注目である。
太陽光や風力の発電設備が接続可能量を上回った場合でも、出力制御を実施するような状況は当面のあいだ考えにくい。原子力発電所の再稼働が各地域で急速に進まない限り、火力発電と揚水発電の出力を調整すれば需給バランスを維持することができる(図4)。
2種類の接続可能量のどちらを採用しても、太陽光や風力の発電設備が需給バランスに大きな影響を及ぼす可能性は今のところ小さい。影響が出るとしたら、原子力発電所を数多く再稼働させた場合だ。先行きが不透明な原子力に過度な期待をかけるあまりに、ルールを複雑にして再生可能エネルギーの拡大を妨げている現状こそ早く是正すべきである。
関連記事
- 再生可能エネルギーに逆風、原子力発電の電力が増える九州の未来
九州電力が川内原子力発電所の1号機を再稼働させて、8月14日から送電を開始する。9月上旬には最大89万kWの電力を供給する予定で、年内には2号機も再稼働する見通しだ。九州では需要の少ない春に供給力が過剰になり、発電設備の出力を抑制する可能性が高まるが、原子力は対象外である。 - 節電するほど再生可能エネルギーを増やせない、出力制御の大いなる矛盾
電力会社は地域の需要が供給力を下回る場合に、太陽光や風力による発電設備の出力を制御できる。2015年1月から適用ルールが広がり、太陽光は年間30日を超えて出力制御が可能になった。九州では100日以上に及ぶような試算結果も出ているが、原子力をフルに稼働させることが前提だ。 - 原子力がゼロになれば、電気料金は年間2万7000円まで増えてもよい
政府が2030年のエネルギーミックス(電源構成)の案を決定したものの、原子力に対する消費者の嫌悪感は根強い。CO2排出量を削減するために、原子力と再生可能エネルギーのどちらを選択するのか。京都大学が4000人の消費者を対象に、電気料金と原子力・再エネの受容度を分析した。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.