世界の空調機器市場を舞台に、日本メーカーの主導権争いが白熱:省エネ機器(3/3 ページ)
世界の空調機器市場で日本メーカーが活発な動きを見せている。日本メーカーによる欧米メーカーの買収や提携、合弁会社の設立などによる主導権争いが繰り広げられているのだ。
早期にM&Aを仕掛け世界最大となったダイキン
このように日本を代表する総合電機メーカーがこぞって空調事業を強化する背景にはグローバルでの高い成長が見込めるところにある。研究機関のBSRIAによると2014年の世界のHVAC市場規模は977億ドル(約11兆7000億円)。これが2016年に1088億ドル(約13兆560億円)となり、2018年には1237億ドル(約14兆8440億円)に達すると予測されている。メーカー各社はこの拡大する市場でシェア獲得を図るために、買収・連携を進めているのだ。
2014年度の空調・冷凍機事業の売上高が1兆7109億円を誇る世界最大の空調機器メーカーのダイキン工業は、こうした取り組みをいち早く進めて、その地位を確立してきた。同社は2006年に世界ナンバーワンの売り上げを目指して取り組みを開始。当時グローバルアプライド(大型業務用空調)事業で世界4位のマッケイ・インターナショナルを傘下に持つマレーシアの空調メーカー、OYLインダストリーズを買収した。
さらに、2012年にはグローバル空調市場でのリーディングカンパニーとしての地位を盤石するため米国住宅用ユニタリエアコン(全館空調機)のリーディングメーカーであるGoodmanを買収している。これにより、ダイキン工業のRAC、PAC、VRFなどのダクトレス空調および大型のアプライド空調に、北米で主流のダクト式ユニタリ空調機が加わり、製品ラインアップを拡大。また、Goodmanの販売拠点と傘下のディーラーを生かして、北米市場での売上高を伸ばした。
パナソニックと富士通ゼネラルも海外成長を強化
ダイキン工業、三菱電機、日立、東芝の他にも、日系空調機メーカーはそれぞれ活発な動きを見せている。
RACで高いシェアをもつパナソニックは、2015年4月にそれまで事業部だったエアコン事業を「エアコンカンパニー」に格上げし、併せて大型空調のBtoBルートでの販売を強化する方針を打ち出した。その一環として2015年10月には節電と省エネ性を両立するガス冷暖房システムである超高効率ガスヒートポンプエアコンの販売を開始する。2009年に子会社化した三洋電機の業務用空調機器は高い評価を得ていたこともあり、パナソニックの空調機事業の拡大戦略に注目が集まる。同社はエアコンの売上高を2014年度の4606億円から2015年度には前年比11%増の5133億円に引き上げる計画だ。
富士通ゼネラルも空調機器メーカーとして実績を伸ばしており、2014年度の空調機部門の売上高は2189億円、前年比12.3%増を記録した。同社の場合海外比率が高く同年度も1679億円(同22.9%増)と77%を占めている。2015年も市場開拓を積極的に進めている北米市場向けに新製品17機種を投入しダクトレスタイプの普及に取り組むなど海外戦略を一層強化している。
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