東京電力が中部に進出、ガス・水・通信とセット販売へ:電力供給サービス
東京電力は中部と関東を拠点に250万件を超える顧客基盤を持つTOKAIグループと業務提携契約を結んだ。10月中に中部電力のエリアで法人を対象に電力とガスのセット販売を開始して、2016年4月には中部・関東の両エリアで家庭向けに水の宅配や通信サービスも加えたセット商品を販売する。
東京電力が業務提携したTOKAIグループは静岡県を中心にガスと通信サービスを主力商品として事業を展開している(図1)。LP(液化石油)ガスの顧客数は58万件で全国3位の規模がある。通信分野でもISP(インターネットサービスプロバイダー)事業の売上高が全国4位、CATV(ケーブルテレビ)事業では全国2位に入る顧客基盤を抱えている。
こうした中部と関東にまたがる顧客基盤を生かして、電力と組み合わせたセット商品の販売に乗り出す。2016年4月からTOKAIグループが東京電力の販売代理店になって、LPガスや都市ガスのほか、通信サービスや水の宅配サービスを加えたセット商品を家庭向けに提供する予定だ(図2)。
TOKAIグループは2014年11月からガスと通信のセット販売を開始して準備を進めてきた。複数のサービスをまとめて購入する顧客に対して利用料金の値引きやポイントプログラムなどの特典を提供している。顧客が獲得したポイントはイオングループの「WAON」と共通に使うことができる。電力を組み合わせたセット商品でも値引きか特典を選べるようにして多様な顧客ニーズに対応する方針だ。
両社は家庭向けの販売に先立って、中部電力のサービスエリアで法人を対象にした電力とLPガスのセット販売を10月中に開始する。東京電力の100%子会社で新電力のテプコカスタマーサービスが高圧電力を供給して、TOKAIグループが産業用のLPガスを供給する体制になる(図3)。
すでに小売が自由化されている高圧電力とLPガスを割安なセット価格で販売して中部電力の顧客を獲得していく。一方で東京電力は中部電力とのあいだで火力発電事業の統合を進めている。小売全面自由化と発送電分離による電力市場の改革を先取りしながら、既存の枠組みを越えた事業展開を急ぐ。中部電力も年内に小売事業の対抗策を打ち出してくることは確実だ。
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