福岡県豊前市でバイオマス発電を開始へ、パームヤシ殻で:自然エネルギー
九州電力グループの九電みらいエナジーは電力売買事業を展開するイ―レックスおよび九州高圧コンクリート工業、豊前開発環境エネルギーとの間で福岡県豊前市でのバイオマス発電事業の検討を開始することについてこのほど合意書を締結した。
九電みらいエナジーとイ―レックスが中心となり、九州電力への全量売電を前提にPKS(パームヤシ殻)を主燃料とするバイオマス発電事業に関するフィージビリティ・スタディ(事業化可能性調査)を実施。事業計画地の所有者である九州高圧とは土地の賃貸借について検討し、豊前開発とは灰処理と工場敷地周辺の環境整備について検討していく(図1)。
九電みらいエナジーは太陽光発電、風力発電、地熱発電、水力発電、バイオマス発電の開発・運営事業を行う九州電力のグループ会社。グループの信頼と技術を生かして、調査・計画・建設・運営管理を一貫体制で行い長期安定稼働を目指している。バイオマス発電についても事業化検討からプラント建設、バイオマス燃料調達などの事業運営まで対応し高い評価を得ているという。
同社ではバイオマス発電のメリットについて、これまで捨てられたり、放置されたりしていたものをバイオマス発電の燃料に有効利用することで環境保全に貢献することをあげている。例えば家畜の排せつ物は野積みなど不適切な処理を行うと悪臭や地下水汚染を引き起こす。しかし、バイオマス発電で焼却することで、焼却灰は大幅に減容化され、有機肥料としても用いられる。バイオマス発電は発電による電力利用に加えて、発電した後の熱を温熱利用(地域の暖房や温水利用)することや焼却灰のリサイクルでさらにバイオマス発電の付加価値を高めることが可能となる。
九電みらいエナジーでは地域で発生する廃棄物系バイオマスや放置されたままの未利用バイオマス(林地残材)による発電を主な対象に収益性を見計らいながら開発・運営に取り組む方針だ。
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