再生可能エネルギーの電力買取、固定価格から変動方式へ:法制度・規制(2/2 ページ)
2030年に向けて再生可能エネルギーの拡大と買取費用の低減を両立させるために、政府は現行の固定価格買取制度の価格決定方法を見直す。年度別に固定の価格を設定する方式から、長期に価格が低減していく方式や市場価格に連動する方式を検討中だ。早ければ2016年度から導入する。
ヨーロッパでは太陽光に入札方式も
ドイツでは再生可能エネルギーの電力買取制度を開始して3年目の2002年に、価格変動方式へ移行した(図3)。毎年の買取価格を一定の比率で低減させて、長期の買取価格を保証しながら国民の負担額を抑制する目的だ。
さらに2009年からは、直近の1年間に導入した太陽光発電設備の総量に応じて買取価格を引き下げる新しい方式を導入した。ただし政府が年間の導入量と低減率を組み合わせて設定する必要があり、適正な条件を決めるうえで難易度は高い。事業者にとっても買取価格を予想しにくい方式と言える。
ドイツでは2015年から入札方式も試験的に導入した。年に3回の入札を実施して、買取価格の最低額を決定する方式である。買取量に制限を設けるため、必ずしも買取が保証されない問題点は残る。それぞれの価格決定方式には一長一短があるが、日本では一定比率で低減させる第2の方式を採用する可能性が大きい(図4)。
ドイツのほかにもヨーロッパの先進国では、太陽光を対象に入札方式を実施しているケースが多く見られる。いずれも卸市場で取引される電力の平均価格にプレミアムを上乗せする(図5)。このため「FIP(Feed-In-Premium)」と呼ばれる。
FIPには一定額のプレミアムを上乗せする固定型のほかに、固定型でも買取価格の上限と下限を決めて運用する方式や、プレミアムを変動させて買取価格を一定以上に維持する方式がある。ヨーロッパでは変動型を採用する国が多く、日本にFIPを導入する場合にはプレミアム変動型が有力だ。
政府は早ければ次の2016年度の買取価格から新方式を導入する。当面は複数年の買取価格を低減させる方式を採用したうえで、状況を見ながらFIPへ移行していく見通しだ。再生可能エネルギーの種類別に設定する買取価格の低減率をはじめ、条件の設定次第で今後の導入量が左右されることになる。日本の再生可能エネルギーも新しいフェーズへ向かい始めた。
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