CO2を分離して回収するCCUS型石炭火力発電、NEDOが技術開発に着手:蓄電・発電機器
NEDOは、石炭火力発電から排出されるCO2を一層削減するためのCO2分離型化学燃焼石炭利用技術開発に着手する。
新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)が、新たに開発に着手するのは、CO2を回収・利用・貯留するCCUS(Carbon dioxide Capture, Utilization & Storage、発電所などから排出されるCO2を他のガスから分離・回収し、大気中への排出を防ぐ技術)に関連する、CO2分離型化学燃焼石炭利用技術(ケミカルルーピング技術)である(図1)。
石炭は埋蔵量が豊富で、低価格で安定供給性に優れたエネルギー源だ。石炭火力は2030年時点の総発電量の約26%を占めるとの予想もある。一方で石炭火力発電所はCO2を多く排出するため、国際的な地球温暖化への取り組みが広がる中、石炭火力発電から排出されるCO2の一層の削減が求められていた。
ただ、それには次世代技術の普及によるさらなる高効率化に加え、CCUSの利用推進が必要になる。現状では、CO2分離・回収のためには専用のCO2分離・回収装置もしくは酸素燃焼用の空気分離装置が必要で、これらに関係するエネルギー損失のため現状ではコストが1トンあたり3000〜4000円程度と高額になることが課題だとされてきた。
ケミカルルーピング技術で回収コストを1000円/トンへ
そこで、NEDOはCO2分離・回収装置または空気分離装置が不要となる中小規模の石炭火力発電向けのケミカルルーピング技術の開発に着手する。ケミカルルーピング技術は酸素キャリア(石炭が燃焼するための酸素を運ぶ媒体。金属酸化物が用いられる)による石炭の酸化反応によりCO2のみを排出させる技術で、従来のようなCO2分離装置が不要になるため、CO2分離・回収コストの低減が期待される。
流動床燃焼を用いるため、中小規模石炭火力発電に適しており、微粉炭では使いにくい低品位炭やバイオマスを使えるという特徴を持つ。今回の技術開発事業ではCO2分離・回収コストを1000円/トン(圧縮コストを除く)を見通せる同技術の実用化に向けた基盤研究に取り組む。事業総額は約16億5000万円で、期間は2020年度までを計画する(図2)。
具体的には三菱日立パワーシステムズ、石炭エネルギーセンター、エネルギー総合工学研究所、産業技術総合研究所を委託先として天然および人工の酸素キャリアについて反応性や耐久性などの評価試験を実施する。その上で、ライフサイクルコストの低い酸素キャリア候補を選定し、これに基づいたプラント構成について検討、最終的には小型のプロセス試験装置によりシステム成立性を検証する。
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