季節風と“見える化”で工場を省エネに、夏場の空調電力を17%削減:スマートファクトリー
YKK APは富山県の生産工場にエネルギー消費量を“見える化”するシステムを導入。このシステムを活用し、春から夏に吹く季節風を工場内に取り入れて夏場の空調システムの電力消費量を17%削減した。
アルミ建材メーカーのYKK APは、季節風を活用した生産工場の省エネに取り組んでいる。同社の富山県黒部市の黒部荻生製造所(図1)では、2013年6月から工場のエネルギー消費量や職場環境(快適性)をリアルタイムに“見える化”する独自システムを導入。このシステムを活用して状況に応じて窓を開け、工場内に風の流れを作ることで空調設備の運転時間を減らし、夏場のエネルギー消費を抑制している。
黒部荻生製造所は黒部川扇状地に位置し、春から夏にかけて富山湾沖から適度に季節風が吹く環境にある。これまで同製造所では、一般的な工場のと同じく窓を閉め空調設備で職場環境を維持していた。しかし夏場の省エネ推進に、自然エネルギーである季節風を取り入れることを検討。社内で通風シミュレーションを実施した結果、省エネへの有効性を確認したという。
実際の運用方法は以下の通り。まず夜間と午前中は建屋全体で窓を開け、外気を取り入れる。YKK APが導入したエネルギー状況の“見える化”システムには、工場内の風向・風速・温度・湿度や、これらのデータから算出した快適性と消費電力レベルがリアルタイムに表示される。これを活用して、工場内の環境が空調の運転開始条件を満たした場合、工場内の各エリアにいる“窓管理者”が窓を閉め、空調ファンを作動させる。見える化システムを活用して窓の開閉や空調設備を作動させるタイミングを適切に判断することで、空調設備の運転時間を削減している(図2)。
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