温泉とスキーの高原に地熱発電所、2020年にも15MW級で運転開始へ:自然エネルギー(2/2 ページ)
地熱資源が豊富な岩手県の八幡平市で発電所の開発プロジェクトが動き出した。温泉とスキー場で有名な安比地域に、発電能力が15MW級の設備を建設する計画だ。すでに環境影響評価の手続きに着手した。順調に進めば2018年に建設工事に入って、2020〜21年に運転を開始できる。
秋田県では42MWを建設開始
安比地域の周辺には火山が多く存在していて、日本でも有数の地熱資源が豊富なところだ。東北電力グループが3つの地熱発電所(澄川・松川・葛根田)を運転しているほか、三菱マテリアルも「大沼地熱発電所」(発電能力9.5MW)を1974年に運転開始している(図3)。現在は安比地熱のほかに、JFEエンジニアリングなどが設立した「岩手地熱」が7MW級の地熱発電所の開発プロジェクトを進めている。
さらに安比地域から南に下って、秋田県の湯沢市にある山葵沢(わさびさわ)・秋ノ宮地域でも地熱資源の開発が活発に始まっている。この一帯でも三菱マテリアルと三菱ガス化学は地熱発電所を建設中だ。電源開発(J-POWER)と3社で「湯沢地熱」を設立して、2015年5月から「山葵沢地熱発電所」の建設工事に入った(図4)。
山葵沢地熱発電所は2019年5月に運転を開始する予定で、発電能力は42MWに達する。環境影響評価を実施した初めての地熱発電所である。安比地域の地熱発電所が手続きを完了すると2カ所目の事例になる。
日本は世界で3番目に地熱の資源量が多いにもかかわらず、地熱発電の導入量は米国などと比べて少ないのが現状だ。環境影響評価にかかる時間とコストが大きな障壁になっていて、開発が進んでいるプロジェクトは環境影響評価が不要な10MW未満の発電設備が多い(図5)。
加えて地熱資源の多くが国立・国定公園の中にあるため、長年にわたって発電所の建設が規制されてきた。政府は再生可能エネルギーの拡大に向けて規制を緩和する一方、環境影響評価の期間短縮を図りながら、地熱発電に対する補助金の交付を通じて開発支援に乗り出している。ようやく国内でも地熱発電所の建設が現実的になってきた。
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