関西に流れる電力を風力発電で増やす、騒音対策が農山村の課題:エネルギー列島2015年版(30)和歌山(3/3 ページ)
風況に恵まれた和歌山県の丘陵地帯には大型の風車が数多く立ち並ぶ。関西電力や大阪ガスも風力発電所を展開して再生可能エネルギーの供給量を拡大中だ。風車が発する騒音に悩まされる住民もいることから、適切な対策が欠かせない。環境負荷の低い太陽光発電を導入する動きも広がってきた。
地域主導で太陽光や小水力発電
2016年4月に電力の小売全面自由化が始まると、圧倒的な顧客基盤をもつ関西電力と大阪ガスのあいだで激しい競争が予想される。一般の家庭でも再生可能エネルギーの電力を希望するケースが数多く出てくる見通しで、両社ともに多様な電力源を確保して対応する必要がある。
風力発電を拡大する大阪ガスに対して、関西電力は環境に与える負荷が小さい太陽光発電の増強に乗り出した。和歌山県では有田市の臨海工業団地で2015年10月に「有田太陽光発電所」の運転を開始したところだ(図6)。発電能力が29.7MWに達する県内で最大級のメガソーラーである。
年間の発電量は3100万kWhを見込んでいて、一般家庭で8600世帯分の電力を供給することができる。関西電力グループは再生可能エネルギーによる発電設備を10万kW(キロワット)に拡大する計画を進めていて、そのうちの3割を有田太陽光発電所が占める。
和歌山県で固定価格買取制度の認定を受けた太陽光発電設備の規模は全国の28位まで上昇してきた(図7)。風力発電が引き続き活発だが、小水力発電も規模は小さいながら増え始めている。
買取制度の認定を受けて稼働した小水力発電所では「島ノ瀬ダム発電所」が最初の事例だ。梅の生産量で日本一を誇る、みなべ町の山間部で2012年に運転を開始した。農業用のダムから下流に放流する水を発電機に取り込んで利用する(図8)。28メートルの落差を生かして、最大で140kWの電力を作ることができる。
年間の発電量は75万kWhになり、200世帯分の電力に相当する。年間の売電収入は2500万円(税抜き)を見込めるため、買取期間の20年間では総額5億円にのぼる。発電所の建設費は1億3000万円かかった。売電で得られる収益は地域農業のコスト削減に生かす方針だ。
このダムの下流にある農業用水路では、水量を調整する池に太陽光発電設備を導入する計画も進んでいる。大規模な風力発電所が稼働するかたわらで、地域主導による小規模な水力発電や太陽光発電が増えて、再生可能エネルギーのバリエーションが広がっていく。
*電子ブックレット「エネルギー列島2015年版 −関西編 Part2−」をダウンロード
2016年版(30)和歌山:「町営の小水力発電所が動き出す、大都市には最先端の下水バイオマス」
2014年版(30)和歌山:「黒潮が流れるエネルギーの宝庫、海流発電とメタンハイドレートも」
2013年版(30)和歌山:「本州の最南部にある未開の地で、巨大なメガソーラーが次々に姿を現す」
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