国内最大級の木質バイオマス発電所、東京湾岸で8万3000世帯分の電力:自然エネルギー(2/2 ページ)
電力の大市場を抱える東京湾岸の工業地帯に、発電能力49MWの木質バイオマス発電所が営業運転を開始した。昭和シェル石油グループが製油所の跡地に建設した発電所で、電力事業を拡大する戦略の一環だ。燃料は海外から輸入する木質ペレットとパームヤシ殻を利用する。
火力と再エネで100万kWへ
昭和シェル石油が京浜バイオマス発電所を建設した用地には、2011年までグループ会社の製油所が稼働していた(図5)。国内の石油市場が縮小を続けていることから、全国規模で石油精製設備を集約して効率化を図る目的で閉鎖を決めた。その跡地は海外から燃料を輸入するのに適した立地に加えて、電力の需要が大きい首都圏にあるため、再生可能エネルギーによる電力を大量に生み出せるバイオマス発電所の建設に至った。
昭和シェル石油は新電力として企業・自治体向けに電力の供給事業を拡大中だ。すでに小売電気事業者の登録も済ませていて、2016年4月から家庭向けにも電力を販売することができる。バイオマス発電所に隣接する横浜市の臨海地区では、東京ガスと共同で火力発電所の「扇島パワーステーション」を運転している(図6)。
扇島パワーステーションの発電能力は現在のところ80万kWだが、2016年3月までに120万kWに増強する。昭和シェル石油は出資比率に応じて25%分の30万kWを利用することができる(残り75%は東京ガス)。このほかに太陽光発電を含めて電力小売用の電源を100万kWまで拡大させる計画だ。
昭和シェル石油のグループ会社には太陽電池モジュール大手のソーラーフロンティアがある。昭和シェル石油はコスモ石油と日本政策投資銀行の3社で設立した「CSDソーラー合同会社」を通じて、ソーラーフロンティアの太陽電池モジュールを使った太陽光発電所を全国7カ所に展開している。
その中で規模が最も大きいのは、扇島パワーステーションと同じ地区で9月に稼働した「CSDソーラー扇島太陽光発電所」である(図7)。発電能力は7.6MW(7600kW)で、横浜市では最大の太陽光発電所になった。年間の発電量は900万kWhを見込んでいて、2500世帯分の電力を供給することができる。
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