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環境省が「是認しがたい」石炭火力発電所、石炭中継基地の隣に建設へ:電力供給サービス(2/2 ページ)
山口県の宇部市に広がる臨海工業地帯で注目の石炭火力発電プロジェクトが動き出した。国内最大の石炭中継基地に隣接して、発電能力が120万kWの設備を建設する計画だ。環境影響評価の最初の段階で環境大臣が「是認しがたい」と意見を出したが、手続きは着々と進んでいる。
LNG火力よりもCO2排出量が多い
石炭火力発電は燃料費を低く抑えられる半面、LNG(液化天然ガス)を利用した場合と比べて発電効率が低く、CO2排出量も多くなる(図4)。西沖の山発電所では現在の石炭火力で最先端の発電技術である「超々臨界圧(USC:Ultra Super Critical)」の採用を決めているが、それでも環境省は難色を示した。電力業界全体でCO2排出量の削減に取り組む枠組みができていないためである。
電力会社とJ-POWERが中心になって火力発電の排出量を2020年度までに年間で最大700万トン削減する目標を9月に発表して事態が動き始める。これを受けて西の山発電所の建設を担当する山口宇部パワーは11月10日に、環境影響評価の第2段階になる「方法書」を国と地元の自治体に送付して手続きを進めた。方法書の中でも電力業界のCO2排出削減目標の実行計画に寄与していくことを掲げている。
同様に中部電力が愛知県の「武豊火力発電所」の設備を石油から石炭へ更新する計画についても、環境省は8月の時点で「是認できない」との意見を出している。それでも中部電力は10月15日に方法書を提出して、環境影響評価の手続きを前へ進めた。環境省は2つのプロジェクトの方法書に意見を出す権限がある。その内容によって今後の石炭火力発電所の新設計画に影響が及ぶことは必至だ。
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