サッカースタジアムに太陽光発電と蓄電池の電力、万博の跡地がスマートシティに:電力供給サービス
1970年に大阪で開催した「EXPO’70」の跡地に、サッカースタジアムを備えたスマートシティが誕生する。敷地内に太陽光発電と蓄電池を設置して、平常時は電力需要のピークカットに生かす一方、災害時には避難所になるサッカースタジアムに電力を集めて供給を続けることが可能になる。
三井不動産が大阪府吹田市の万博記念公園の中に、複合施設の「EXPOCITY(エキスポシティ)」を11月19日に開業する。17万平方メートルの敷地に、体験型のミュージアムや大型のショッピングモールを集めた。さらに隣接地には4万人を収容できる「市立吹田サッカースタジアム」が10月に完成して、ホームチームの「ガンバ大阪」の試合が始まっている。
この新しい複合施設とサッカースタジアムを組み合わせて、太陽光発電と蓄電池による電力供給システムが運転を開始する(図1)。EXPOCITYの中に設置した416枚の太陽光パネルで最大100kW(キロワット)の電力を蓄電池に充電しながら各施設に電力を供給することができる。蓄電池の容量は168kWh(キロワット時)で、一般家庭の1日の電力使用量(10kWh)に換算して17世帯分に相当する。
EXPOCITYとサッカースタジアムは共通の受電設備で関西電力から供給を受ける形になっている。平常時には太陽光発電の電力を直流のまま蓄電池に充電して、満充電になったら余剰分を各施設に供給して需要のピークカットに生かす。何らかの事故によって停電が起こっても、EXPOCITYとサッカースタジアムに設置した非常用発電機が個別に稼働して電力の供給を続けることが可能だ(図2)。
もし大地震などが発生して災害が長期化した場合には、地域の避難所になるサッカースタジアムに太陽光発電と蓄電池の電力を集約する仕組みになっている(図3)。災害時にはサッカースタジアムが救援物資の集積拠点にもなることから、最低限の電力を太陽光発電と蓄電池で継続して供給できるメリットは大きい。
EXPOCITYは36万人の人口を抱える吹田市の北部に位置している。新大阪駅や大阪国際空港から10キロメートル圏内に入り、周辺には住宅地が広がる大阪のベッドタウンでもある(図4)。三井不動産は2020年の東京オリンピックに向けて全国で開発が進むスポーツ施設を対象に、地域の防災力を高めるモデルとしてEXPOCITYを位置づける考えだ。
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