洪水対策の次は停電対策、川に面した緑地にメガソーラーと蓄電池:自然エネルギー
大阪府の東大阪市にある洪水対策用の緑地の一角でメガソーラーが運転を開始した。周囲には川が何本も流れていて、大雨が降ると洪水が発生しやすい地域だ。メガソーラーには非常用のコンセントと移動式の蓄電池を備えて、停電時には地域の電力源として利用できるようにした。
東大阪市を流れる「恩智川(おんちがわ)」は以前から洪水が発生しやすい川で、さまざまな対策がとられてきた。その1つが治水緑地だ。大雨が降った時に川の水の一部を緑地の中に一時的に貯められるようにして、洪水を未然に防ぐ。こうした機能を果たす緑地に新しいメガソーラーが完成して6月5日に発電を開始した(図1)。
大阪府が府有地を活用してエネルギーの地産地消を推進するプロジェクトの第1弾として公募したものだ。緑地内の3万平方メートルの用地に、発電事業者の洸陽電機が建設した(図2)。発電能力は2MW(メガワット)で、年間の発電量は329万kWh(キロワット時)を見込んでいる。一般家庭の使用量(年間3600kWh)に換算して900世帯分に相当する。
このメガソーラーを公募するにあたって、大阪府はいくつかの条件を設定した。1つは土地の使用料を1平方メートルあたり年間に100円以上(上限590円)で提案すること。上限の590円は府の条例で定めた基準である。
もう1つは地域に停電が発生した時に無償で電力を供給することである。自立運転機能を備えたコンセント(15アンペア、100ボルト)を敷地内の安全な施設の中に6個設けるほか、容量が2.5kWhの移動式の蓄電池を3台用意して周辺の避難所などで利用できるようにする(図3)。
公募に応じた4社の中から、土地の使用料を上限の590円で提示した洸陽電機が事業者に選ばれた。大阪府には年間で約1700万円の使用料が入る。契約期間は当初3年間で、最長20年まで延長することができる。洸陽電機は固定価格買取制度を通じて売電するために、太陽光発電(非住宅用)の買取期間である20年間にわたって土地を賃借する予定である。
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