電力の購入先変更を検討する人が8割に、電気の質に不安も:動き出す電力システム改革(50)(2/2 ページ)
電力の小売自由化が一般にどのくらい認知されているのか。資源エネルギー庁が全国1000人を対象に調査した結果、9割以上が自由化を認識していて、購入先の変更を検討する人も8割に達した。電気料金の低下に期待する一方で、電気の質など供給面の情報は浸透していない。
「電気の質が変わらない」ことを7割は知らず
電力の小売自由化について具体的な内容で尋ねた結果を見ると、特に安定供給に関して理解が得られていないことがわかる。全体の7割強の人が「使用する電力会社を切り替えても、停電の頻度や電気の質は変わらないこと」を知らないと回答した(図4)。それも当然で、発電・送配電・小売の仕組みは一般の人には理解しにくい。
一方で電力の購入先に期待したいことを尋ねると、実に24.2%の人が「電力供給が安定している(停電などの心配がない)こと」を挙げている(図5)。この点を周知することが小売自由化の進展には欠かせない。資源エネルギー庁はテレビをはじめ各種のメディアを通じて情報を発信していく方針だ。
あとは電気料金がどのくらい安くなるかによって、購入先を変更する割合が変わってくる。電力会社と比べて5%下がれば、4分の1の人が変更すると回答した(図6)。さらに10%まで下がると、全体の6割が現在の電力会社から切り替える意向だ。購入先の変更を検討しないと答えた人でも、電気料金が10%下がれば1割は変更する。
2016年1月には切り替えの事前申し込みが始まる。それまでに電力会社を含めて多くの小売電気事業者が料金メニューを発表する予定だ。ただし4月1日の自由化後すぐに変更したい人は5.9%に過ぎず、前向きに検討する人たちでも当初は様子を見ることになる(図7)。1年以内に変更する意向がある割合は合計で35.9%である。
2017年4月1日になれば、都市ガスも家庭向けの小売が自由化される。電力会社がガスを組み合わせたセット商品で攻勢をかけることは確実で、ますます価格競争が激しくなっていく。小売自由化の認知が進むほど参入障壁は低くなって、電力会社とガス会社は厳しい競争を迫られる。
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