電気自動車の中古蓄電池、ドイツで再利用も含めたリサイクルチェーン確立へ:蓄電機器・発電機器(2/2 ページ)
電気自動車はもはや“移動体”としての役割だけでは語れない――。ドイツのダイムラーとモビリティハウス、GETEC、ルモンディスなどは、中古の電気自動車用蓄電池を再利用した蓄電池システムの実用化にめどを付け、13メガワットの蓄電池システムを2016年初に電力系統に接続することを明らかにした。
電気自動車用蓄電池が持つ電力安定化の可能性
ダイムラーは、電気自動車のバッテリーは自動車での使用が終わった後にすぐに終わるわけではなく、電気自動車での10年の使用後も定置型として10年は利用できるとの考えを示している。また既に2015年6月にメルセデス・ベンツのエネルギー貯蔵ユニットをモジュール化して定置型蓄電池の展開を開始することを発表(関連記事)するなど、電気自動車のバッテリーのさまざまな展開を強化している。
再生可能エネルギーの活用が拡大する一方で、これらのエネルギーは変動幅が大きく電力系統の安定化のためのバッファとなる蓄電池への期待が高まっている。さらに電力安定化に活用するためには、蓄電池の容量対効果の面で実用普及が現状では難しい状況だ。こうした背景の中、期待を集めているのが電気自動車の蓄電池である。電気自動車は家庭内の電力貯蔵の役割を担うだけでなく、電気自動車としての使用後も組み合わせて利用すれば、定置型の大規模蓄電池として利用可能である。また、使用済みであるため安価であるという利点もある。
この流れの中、日本の自動車メーカーでも三菱自動車や日産自動車が実証を進めている他(関連記事)、トヨタ自動車もプリウスから回収したニッケル水素バッテリーを活用した定置型蓄電池を発売している(関連記事)。
一方、米国のテスラモーターズ(Tesla Motors)も、電気自動車で活用する蓄電池の製造能力を生かし、定置型の蓄電池システムに参入しており(関連記事)、“移動体”である電気自動車の、“移動しない”蓄電池活用に注目が集まっている。
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