バイオマス産業都市の先駆けに、中国山地で発電と観光を両立:エネルギー列島2015年版(33)岡山(3/3 ページ)
岡山県の真庭市で木質バイオマス発電所が運転を開始して、市が掲げる産業都市構想は大きく前進した。林業と製材業が共同でバイオマス産業の創出に取り組みながら、観光にも生かして地域の活性化を図る。一方で年間の日射量が全国平均を上回る瀬戸内海の沿岸部では太陽光発電が拡大中だ。
太陽光の発電量は全国平均の1.2倍
内陸部でバイオマスの導入量が拡大する一方、瀬戸内海に面した沿岸部では太陽光発電が活発に進んでいる。岡山市を中心に南部の各地域では日射量が多く、年間の発電量は全国平均を2割も上回る(図6)。同じ建設コストをかけても売電収入を1.2倍に増やすことができる。
岡山県内で代表的なプロジェクトが瀬戸内市の「錦海(きんかい)塩田跡地」で建設中のメガソーラーである(図7)。500万平方メートルに及ぶ広大な用地に89万枚の太陽光パネルを設置して、発電能力は230MWに達する。運転開始は2019年4月の予定で、完成すれば日本で最大のメガソーラーになる。
瀬戸内市を含む「岡山圏」では発電能力1kWあたりで年間の発電量は1231kWhを見込める。230MWになると2億8000万kWhにのぼる電力を作り出すことができる。約8万世帯分に相当する電力量で、瀬戸内市の総世帯数(1万5000世帯)の5倍以上に匹敵する。
このメガソーラーの建設に合わせて、瀬戸内市は「太陽のまちプロジェクト」を推進していく。発電設備に加えて防災や環境保全の対策を実施して安全な街づくりに生かす。メガソーラーと海のあいだに防潮堤を設置するほか、用地の中央に排水路を整備する計画だ(図8)。
錦海塩田跡地は海面よりも低い部分が多く、浸水被害を防ぐ対策が急務になっている。瀬戸内市は2010年に塩田跡地を買い取り、メガソーラーの導入と防災対策の強化を同時に進める計画に乗り出した。メガソーラーを建設する5年間と発電事業の20年間を合わせた25年間に、発電事業者から土地の賃貸料が101億円も入る。この収入を使って防潮堤や排水ポンプの設置が可能になった。
岡山県の再生可能エネルギーは太陽光発電を中心に、風力・小水力・バイオマスを加えて着実に拡大している。固定価格買取制度の認定を受けた発電設備がすべて稼働すると、県内の75万世帯が使用する電力をほぼ100%供給することができる(図9)。再生可能エネルギーを地域の活性化と防災対策に生かすモデルケースになる。
*電子ブックレット「エネルギー列島2015年版 −中国編−」をダウンロード
2016年版(33)岡山:「晴れの国に太陽光発電所が続々と誕生、ゴルフ場の跡地や池の水上にも」
2014年版(33)岡山:「酪農の街に木質バイオマス、塩田やゴルフ場には巨大メガソーラー」
2013年版(33)岡山:「全国平均よりも16%多い発電量、太陽光を5年間で3倍に増やす」
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