全国平均よりも16%多い発電量、太陽光を5年間で3倍に増やす:エネルギー列島2013年版(33)岡山
瀬戸内海に面した岡山県の南部は日射量が豊富で、太陽光発電の効率が全国平均を16%も上回る。その利点を生かして県内の発電設備を2016年までに3倍の340MWへ拡大させる方針だ。加えて小水力発電を4倍以上に増やすほか、木質バイオマスの集積基地を活用した地域連携でも先行する。
「晴れの国」と呼ぶだけあって、岡山県は太陽光に恵まれている。県内各地の太陽光発電の年間発電量を比較してみると、瀬戸内海に面した岡山市や倉敷市の周辺では全国の平均値を大きく超えている(図1)。県全体でも全国平均を16%も上回る発電量の多さだ。
同じ規模の太陽光発電を設置しても、岡山県ならば16%も多くの電力を作ることができる。その分だけ売電収入も大きくなるわけで、固定価格買取制度が始まって以来メガソーラーが急速に増えている。県が調べたところでは、2012年12月〜2013年9月の10カ月間に稼働したメガソーラーは17カ所にのぼり、合計した発電能力は26MW(メガワット)になる(図2)。
新たに大規模なメガソーラーも2013年10月に運転を開始した。製鉄を中心とするJFEグループが倉敷市の社宅跡地に建設した「鶴の浦ソーラーパワー」である(図3)。発電規模は7MWで、年間の発電量は650万kWhを見込んでいる。場所は瀬戸内海に近いことから、実際の発電量は想定の数字を上回る可能性が大きい。
岡山県内の再生可能エネルギーの導入量は今のところ小水力発電が最も多く、太陽光発電が後を追っている(図4)。2013年に入ってから数多くのメガソーラーが運転を開始したほか、5年後の2018年には日本最大の230MWにも達する巨大なメガソーラーが瀬戸内市の沿岸地域に完成する予定だ。
岡山県では2020年に向けた環境基本計画「エコビジョン2020」を策定して、さまざまな環境保全の施策を進めてきた。2011年の東日本大震災の後には、再生可能エネルギーの導入拡大を重点プログラムに追加した。特に力を入れているのが太陽光発電と小水力発電の2つである。
太陽光では県内の発電設備を2016年度までに340MWへ拡大させることを目標に掲げた。2011年度と比べて約3倍の規模で、住宅用の普及率を5%から10%へ、メガソーラーの設置数をゼロから20カ所へ広げる(図5)。同時に小水力発電設備も7カ所から30カ所へ、4倍以上に増やす計画だ。
新たに小水力発電の導入を促進するために、県内の有望な場所28カ所を選んで実現可能性を調査した。その結果から採算性を3段階で評価して、半数の14カ所を最適地として推奨している。
14カ所のうち最大の発電規模を見込めるのが、県北部の真庭市にある「北房(ほくぼう)ダム」である。灌漑用の放水路をそのまま利用して、121kWの発電設備を導入できる可能性がある(図6)。年間の発電量は57万kWhになり、年間に2000万円近い売電収入を期待できる。土地代は無料で、試算では13年程度で採算がとれる。
この北房ダムを含めて最適地の14カ所に発電設備を導入できると、2016年度の目標達成が現実的になってくる。そのほかの適地でも採算性はあり、28か所すべてに導入できれば発電規模は450kW、年間の発電量は360万kWhに拡大する。一般家庭で1000世帯分の電力使用量に匹敵する。
同じ真庭市では木質バイオマスの取り組みも活発になっている。エコビジョン2020では具体的な数値目標を設定していないものの、木質バイオマスの利用促進も重点プログラムの中に入っていて、真庭市のプロジェクトが先行モデルになる。
地元の事業者で構成する木材事業協同組合が市内の産業団地に「真庭バイオマス集積基地」を設置して、未利用の木材を安定的に供給できる体制を構築した(図7)。中国山地から集めた林地残材や製材後の廃材を木質チップに加工したうえで、ボイラー用の燃料などに提供する。
さらに製材会社や協同組合が真庭市と共同で木質バイオマス発電所を建設する計画も進行中だ。発電能力が10MWの大規模な設備を2015年4月から稼働させることが決まっている。年間の発電量は6000万kWh程度になり、売電収入は年に20億円近くを見込める。森林業の新たな収益源としても期待がかかる。
*電子ブックレット「エネルギー列島2013年版 −中国編−」をダウンロード
2015年版(33)岡山:「バイオマス産業都市の先駆けに、中国山地で発電と観光を両立」
2014年版(33)岡山:「酪農の街に木質バイオマス、塩田やゴルフ場には巨大メガソーラー 」
2012年版(33)岡山:「メガソーラーが集まる晴れの国、塩田跡地から空港まで」
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