土地はあるが資金が不足、ならば売電収入を担保に融資を受ける:自然エネルギー
岡山県倉敷市にメガソーラーを立ち上げた企業、ニーズは、資金のうち一部をトマト銀行の融資によってまかなった。特徴的なのは、土地ではなく、売電収入が担保として扱われたことだ。ここにはメガソーラー固有の事情がある。
メガソーラーを立ち上げる方法はさまざまだ。しかし、最終的には土地と資金、系統連系の本申請などの手続き、この3点が必要だ。
船舶工事業を手掛ける企業であるニーズは、岡山県倉敷市の自社所有地(約9924m2)に出力1MWのメガソーラー(図1、図2)を建設、2013年8月31日から売電を開始した。総事業費4億円のうち、設備資金などをトマト銀行からの融資によって調達した。
金融機関は融資を決める際、不動産や有価証券などの金券を担保として重視する。しかし、ニーズの場合は違った。動産担保融資の一種であるABL(Asset Based Lending)*1)が適用された。集合動産譲渡担保・売電債権譲渡担保による融資であり、発電設備と売電債権を担保にしたことになる。
*1) ABL方式は2005年以降に国内で広がった融資の手法。企業の在庫や売掛金などを担保とすることが多いが、家畜や農作物、食品などを対象とした事例もある。
メガソーラーは固定価格買取制度(FIT)の適用を受けることで20年間、日照により多少の変動があるものの、定期的にほぼ定額の売電収入がある。これが融資を受ける上で有利に働いた(図3)。「メガソーラーに特徴的なのは信用度の高い電力会社(一般電気事業者)が買電することだ」(トマト銀行)。つまり融資を回収できる確度が高い。
それではメガソーラーであれば全てABLの適用が可能なのだろうか。「売電額はもちろん、事業計画を見て融資するかどうかを判断する。このとき日照量が重要な基準になる。融資後も発電量が予想通りかどうか確認していく」(トマト銀行)。なお、瀬戸内海沿岸の倉敷市は国内でも日照条件のよい土地だ
今回はトマト銀行がメガソーラー事業に対してABL方式による融資を行った初の事例だ。「今後もABL方式を広げていく方針だ。顧客側には資金調達の方法、手法が広がるというメリットがある」(トマト銀行)。
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