蛍光灯は強制的に政府に禁止されるわけではない:省エネ機器(2/2 ページ)
経済産業省は、「蛍光灯を2020年に禁止する」という一部報道に端を発した誤解に対し「政府が強制的に禁止するのではない」ということを表明。蛍光灯や白熱灯、LEDを含む照明全体で省エネ基準である省エネトップランナー制度を採用するということを明らかにした。
白熱電球・蛍光灯・LEDを含む照明でまとめた省エネ基準
省エネトップランナー制度は、トップランナー基準を満たさないからといって、即座に製造や販売の禁止を求める制度ではない。対象製品によって違いはあるが、罰則としては、社名の公表や罰金などの措置がとられるケースや、省エネ度を示す省エネラベル表示で未達を示すことなどが必要となるケースなどがある。ただ、製造や販売そのものに直接的な規制がかかるわけではない。メーカーが自然に省エネ性に優れた製品を開発し率先して販売するようになるという仕組みこそが、この制度の特徴だからだ。
ただ今回「白熱電球・蛍光灯・LEDを含む照明でまとめて省エネ基準を作る」という方針も示されていることもポイントだ。先述した官民対話の安倍首相のコメントでは「白熱灯については2016年度に省エネトップランナー制度を適用する」ということが明言されているが、照明全体で同じトップランナー基準が設定された場合、省エネ性に優れるとされるLED照明がやはり有利になることは否定できない(図3)。トップランナー制度の設計次第で、白熱灯や蛍光灯が衰退していくという可能性もあるのは間違いない。
トップランナー基準の制度設計はこれから
家庭の電気使用量の中で、照明器具の占める割合は13.4%と単一製品分野としては冷蔵庫に次いで多いとされている(図4)。その照明の省エネ化は、政府としても推し進めていかなければならない状況にある。
照明を一本化したトップランナー基準の設定についても、どういう基準値を決め、どういう枠組みで行うのかという点で、それぞれの照明器具の立場は大きく変わってくる。
2015年12月2日に日本照明工業会が公開した発表文では、照明製品を一本化した新たなトップランナー制度の採用については言及があったが「トップランナー制度につきましては、まだ政府と製造事業者間の議論も始まっておらず、現時点で具体的な内容は一切決まっておりません」という内容が示されており、現実的には制度設計はこれからという話になる。その枠組み次第で、白熱灯や蛍光灯は長く使われ続ける可能性も、より早く終息する可能性もあるという状況だ。
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