水蒸気の使い方を工夫、IGCCより高効率な石炭火力を2030年に実用化:蓄電・発電機器
石炭は埋蔵量が豊富で低価格かつ安定供給性に優れる。しかし石炭を使った火力発電の最大の課題はCO2排出量が圧倒的に多いことだ。NEDOでは石炭火力の高効率化に向け、次世代ガス化システム技術の開発に着手する。
新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)は、石炭火力発電で排出される温室効果ガスの削減を目指し、次世代ガス化システムの技術開発に着手すると発表した。電力中央研究所に事業委託し、まずは基盤技術の開発に取り組む。総事業費5億2000万円、事業期間は2015〜2018年度だ。
現在、次世代の石炭火力技術として2020年ごろの実用化を目標に「石炭ガス化複合発電(IGCC:Integrated coal Gasification Combined Cycle)」の開発が進められている。これは1500度級ガスタービンで送電端効率46〜48%を見込んでいる。今回NEDOが開発に取り組む次世代ガス化システムはこのIGCCの技術に改良を加えて、さらなる高効率化を目指すものだ。
IGCCとはガス化炉内で石炭をガス化し、これを燃焼させてガスタービンを回して発電する。同時に高温の排ガスの熱で蒸気を作り、蒸気タービンでも発電を行う。2つの発電方式を組み合わせて無駄なくエネルギーを活用し、高効率に発電を行うという仕組みだ。
新たに開発する技術は、石炭のガス化をガスタービンの排熱を利用して作る水蒸気で促進させることで、石炭がガスに変わる際の効率を意味する冷ガス効率を向上させるというもの。水蒸気を抽気するため蒸気タービンの出力は低下してしまうが。冷ガス効率の向上によりガスタービンの出力が増加するため、システム全体の発電出力を見ると送電端効率の向上が期待できるという仕組みだ(図1)。
事業委託先の電力中央研究所は小型ガス化炉を使って、石炭のガス化における水蒸気添加の効果を検証し、さらにエネルギー効率の高い酸素製造装置と組み合わせた水蒸気添加型IGCCの成立性を検証していく。NEDOではこの新システムを2030年ごろをめどに実用化したい考えだ。
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