日本初の「石炭ガス化複合発電」の商用機、福島県で連続運転の世界記録を更新:電力供給サービス
燃料費の安い石炭火力に注目が集まるなか、新方式の「石炭ガス化複合発電(IGCC)」による日本初の設備が順調に稼働を続けている。福島県の「勿来発電所」で2013年6月に商用運転を開始して、11月12日に連続運転の世界記録を更新した。IGCCは今後の石炭火力の主流になると期待される。
日本で初めての「石炭ガス化複合発電(IGCC:Integrated coal Gasification Combined Cycle)の商用機は、福島県いわき市にある「勿来(なこそ)発電所」の10号機として運転中だ(図1)。国の補助金で2007年から実証実験を続けて、2013年6月に商用運転を開始した。
勿来発電所は東京電力と東北電力が中心になって設立した卸供給事業者の「常磐共同火力」が運営する。現在は6号機〜10号機の5基が稼働中で、燃料に石炭と石油のほか、木質バイオマスも利用している。このうち10号機が石炭を使ったIGCCによる最新の設備だ。発電能力は25万kWある。
10号機は6月28日にIGCCの商用運転を開始して、11月12日の13時台に3287時間の連続運転を達成して世界記録を更新した。従来はオランダの「ブフナム(Buggenum)発電所」がIGCCの世界記録を保持していた。
IGCCは石炭を燃料にした火力発電だが、ガスによるコンバインドサイクル方式を組み合わせて高効率の発電を実現することができる(図2)。石炭をガスに変換してガスタービンで発電した後、燃焼時の排熱を利用して蒸気を発生させて別のタービンで発電する。2回の発電によってエネルギーの利用効率を高くできることが最大の利点だ。その結果、CO2の排出量を抑制することにもつながる。
従来型の石炭火力の発電効率は40%前後で、IGCCを採用した10号機はわずかに上回る42%になっている。将来は燃焼温度を現行の1200度から1500度以上に引き上げて、発電効率を48〜50%まで向上できる見込みだ。政府も高効率の火力発電を実現する技術として、天然ガスによるコンバインドサイクル発電とIGCCの2つを促進していく方針である。
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