2030年に電力の自給率37%へ、「環境首都」を目指して東京に対抗:エネルギー列島2015年版(36)徳島(3/3 ページ)
徳島県は再生可能エネルギーで地方創生に取り組む新戦略を打ち出した。「環境首都」を掲げて東京都に対抗する意気込みのもと、太陽光を中心に風力・小水力・バイオマスの導入量を拡大させる計画だ。電力の自給率を2030年度までに37%へ引き上げ、水素エネルギーの普及にも力を入れる。
水素でも東京に対抗、11カ所にステーション
山間部を中心に徳島県の農山村では長年にわたって過疎が進んでいる。過疎地域に指定されている町や村の人口は1960年から2010年までの50年間に半分以下に減ってしまった。風力発電所が立地する3つの町・村も過疎地域に含まれている。過疎地域の集落を再生させるプロジェクトが2012年から始まり、再生可能エネルギーを導入して地域の活性化を促進しているところだ。
当面の対象は太陽光と小水力の2種類である。小水力発電では2014年に稼働した「夏子(なつご)ダム小水力発電所」が最初の事例になる(図8)。夏子ダムは県北部にある農業用水を供給するためのダムである。ダムからの放流水を利用して29kW(キロワット)の電力を供給することができる。
夏子ダムの事例をもとに、県内の過疎地域に小水力発電を展開していく。それと並行して、自治体と地元の民間企業や大学・高専が加わって小水力発電機を開発中だ。小水力発電は水量や落差に応じて最適な発電機を導入することが安定した収益を確保するうえで重要になる。複数のタイプの小水力発電機を開発して実証を続けながら、新事業の創出と電力の供給を両立させる狙いがある。
バイオマスでも新しいプロジェクトが始まった。繊維を中心に環境事業に取り組むクラボウが、東部の阿南市の沿岸部にある工場の遊休地に木質バイオマス発電所を建設する計画だ(図9)。自社製のバイオマスボイラーを導入して、地域で発生する間伐材を燃料に利用する。
発電能力は6.2MWである。2016年1月から試運転に入り、4月から売電を開始する予定になっている。年間の売電量は4000万kWhを見込んでいて、一般家庭で1万1000世帯分に相当する。売電収入は1年間に12億円を超える想定で、地域の林業の活性化にもつながる期待は大きい。
徳島県の戦略は再生可能エネルギーだけにとどまらず、水素エネルギーにも広がっていく。2030年までに県内11カ所に水素ステーションを展開して、燃料電池自動車や燃料電池バスを普及させる(図10)。特に関西地域と結ぶ高速バスに燃料電池タイプを投入する計画で、2030年までに合計20台まで増やすことが目標だ。
県が率先してエネルギーの地産地消を推進するために、太陽光発電の電力で水素を製造する設備を2015年度内に県庁に導入する。加えて県内の工場から副生物として発生する水素を有効活用できるように、水素の精製設備の建設に補助金を交付する予定だ。
2030年には電力の自給率が高まるだけではなくて、燃料電池車に供給する水素の製造量も増える。国が推進する水素社会の構築をにらみながら、東京に対抗する「環境首都」の取り組みは続いていく。
*電子ブックレット「エネルギー列島2015年版 −四国編−」をダウンロード
2016年版(36)徳島:「小水力発電所が農山村に復活、ため池には水上式の太陽光発電」
2014年版(36)徳島:「海峡をめぐる自然エネルギー、太陽光から潮流まで電力源に生かす」
2013年版(36)徳島:「市民参加型の発電設備が拡大中、全国40位からの脱却を図る」
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