日本最古の「ため池」のまち、水素と再生可能エネルギーで化石燃料ゼロへ:スマートシティ
1400年の歴史を持つ日本最古のダム式ため池が残る大阪府大阪狭山市。同市ではこうした「水」に関連した地域文化と「水素」をキーワードに、再生可能エネルギーなどを組み合わせて“化石燃料使用ゼロ”を目指す新たなまちづくりプロジェクトを開始した。
大阪府の南部に位置する大阪狭山市は、再生可能エネルギーと水素を活用する新たなまちづくりプロジェクトを開始した。産学連携組織である「グリーン水素シティ事業推進研究会」が主体となり、再生可能エネルギーで製造したCO2フリーな水素の供給インフラを整備するなど、化石燃料を使用しない「グリーン水素シティ」の実現を目指す。
具体的には「水素発電と電力貯蔵事業」「再生可能エネルギー事業」「市内全域を対象としたエネルギーマネージメントシステムの構築およびWi-Fi事業」「水素自動車・水素バス事業」「公共公益施設の省エネルギー改修事業」などのモデル事業を中心に展開していく(図1)。
これらの事業を推進するグリーン水素シティ事業推進研究会は大阪狭山市の他、メルシーfor SAYAMA、ASC、コンコード インターナショナル インベストメンツ グループ、シナネン、清水建設、豊田TRIKE、光通信などの企業で構成している。
大阪狭山市内には約140カ所、市面積全体の約1割を占めるほど多くのため池がある。中でも最大の「狭山池」は現存する日本最古のダム式ため池で、2016年で築造から1400周年を迎える(図2)。同市ではこの狭山池1400周年を機に、水素を活用した発電と電力供給事業を手掛けるメルシーfor SAYAMAを同市の100%出資で設立した。同研究会の構成企業の1社だ。
同社はこれまで大阪狭山市が恩恵を受けてきた「水」をキーワードに、「水素」と「ため池」を結び付け、「活用(地産地消)」「利益(財源)」「自立」を目的にグリーン水素シティの実現を目指すという。ため池を利用した水上太陽光発電事業などにも取り組んでいく。大阪狭山市ではこのメルシーfor SAYAMAの発展とともに、脱炭素社会のモデルケースとして同市を「次世代に引き継ぐことのできる新しいまち」へ発展させていく考えだ。
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