造船の町でメガソーラーとバイオマスが拡大、山の資源も発電に生かす:エネルギー列島2015年版(38)愛媛(3/3 ページ)
海と山に囲まれた愛媛県には再生可能エネルギーの資源が豊富にある。造船で栄えた瀬戸内海の沿岸部では広大な遊休地と日射量を生かしてメガソーラーが相次いで運転を開始した。都市から排出する廃棄物や森林で発生する間伐材を燃料に使ってバイオマス発電も活発になってきた。
風力発電の導入量は全国で第5位
愛媛県の再生可能エネルギーは瀬戸内海の沿岸部で太陽光とバイオマスが増える一方、海をはさんで九州に接する南西部を中心に風力発電が拡大中だ。固定価格買取制度の導入量でも風力発電は全国で第5位に入る(図7)。
南部の宇和島市にある標高500メートルを超える山の尾根に沿って、9基の大型風車が並んでいる。J-POWER(電源開発)が2015年3月に運転を開始した「南愛媛風力発電所」だ(図8)。1基あたりの発電能力は2.4MWで、合計すると21.6MWになる。年間の発電量は5400万kWhを想定している。1万5000世帯分に相当する電力になり、宇和島市の総世帯数(3万7000世帯)の4割をカバーすることができる。
山から海に向けて起伏が激しい宇和島市では、南愛媛風力発電所に続いて20MWクラスの風力発電所の建設計画が3カ所で進んでいる。一帯には年間の平均風速が7メートル/秒を超える場所が広がっていて、風力発電に十分な強い風が吹きつける。
最近では小水力発電の取り組みも進んできた。松山市にある工業用水を供給する水道施設を利用して、2015年8月に「畑寺(はたでら)発電所」が運転を開始した。上部の水槽から発電所まで50メートルの落差があり、最大で510kWの電力を供給することができる(図9)。
年間の発電量は360万kWhを見込んでいて、1000世帯分の電力になる。この電力も入札方式で売電する。1回目は2017年3月までの20カ月分を対象に、新電力の日本ロジテック協同組合が1kWhあたり29.80円で落札した。固定価格買取制度の29円を少し上回る買取価格である。再生可能エネルギーで自治体の収入も増えていく。
*電子ブックレット「エネルギー列島2015年版 −四国編−」をダウンロード
2016年版(38)愛媛:「いちご栽培に水素を活用、工場の廃熱や廃液もエネルギー」
2014年版(38)愛媛:「リアス式の海岸に風力発電、50基を超える風車で自然と共生」
2013年版(38)愛媛:「みかんのバイオマスに続け、南予の風力と東予の太陽光」
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