エネルギー自給率51%へ、「おんせん県」の新9年計画:自然エネルギー(2/2 ページ)
地熱発電を中心に再生可能エネルギーの導入が進む大分県では新たに2016年度から9年間の拡大計画を実施する。最終年の2024年度にはエネルギーの自給率を51%まで高めることが目標だ。発電規模が大きい太陽光のほか、地域の資源を生かした温泉熱発電やバイオマス発電を大幅に伸ばす。
温泉熱発電を農業ハウスに展開
9年計画で大幅に伸ばす予定の温泉熱発電では、県内の農業ハウスに導入する構想がある。県の実証事業で開発した「湯けむり発電システム」と地熱を利用した温度制御システムを組み合わせて、ハウスで消費するエネルギーを自給自足する(図5)。2015年8月に県の農林水産研究指導センターの構内でモデルの農業ハウスが完成した。このモデルを各地域に展開していく。
バイオマス発電では東南アジアから輸入するパームヤシ殻を燃料に利用した木質バイオマス発電所の建設プロジェクトが進んでいる(図6)。発電能力は50MW(メガワット)で、2016年内に運転を開始する予定だ。このほかにも地域で発生する家畜の排せつ物や下水の汚泥を利用したバイオガス発電の導入量を拡大する。
大分県は日射量にも恵まれて、特に沿岸部の工業地帯に大規模な太陽光発電所が集まっている。その中でも2014年4月に運転を開始した「大分ソーラーパワー」は発電能力が82MWに達する日本で最大の太陽光発電所である(図7)。今後は学校を含む県有施設の屋根を事業者に貸し出す方式の太陽光発電も推進していく。
地熱発電の導入量では大分県が全国で第1位だ。阿蘇山の周辺に広がる火山地帯に地熱発電所が集まっている。2015年6月には発電能力が5MWの「菅原バイナリー発電所」が運転を開始した(図8)。周辺では新しい地熱発電所の開発計画も進んでいる。
九州では太陽光発電を中心に再生可能エネルギーの導入量が急増した結果、地域によっては電力の供給量が需要を上回る事態が生じ始めている。再生可能エネルギーの導入量を拡大するうえで制約になり、大分県の目標達成にも影響を及ぼしかねない。
そこで再生可能エネルギーの余剰電力で水素を作り、燃料電池車などに供給するプロジェクトを検討中だ。大学や民間企業と共同でワーキンググループを設置して、事業計画の立案から取り組んでいく。
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