再生可能エネルギーの電力が10万世帯分、木質バイオマスが地域をめぐる:エネルギー列島2015年版(39)高知(3/3 ページ)
森林率が全国1位の84%に達する高知県で木質バイオマス発電が活発に始まった。2015年に2つの発電所が相次いで運転を開始して、地域で発生する未利用の木材を燃料に電力と熱を供給する。太陽光発電では自治体と地元の民間企業が共同で出資する事業モデルが県内各地に広がってきた。
電力会社グループが大規模な風力発電所
高知県の再生可能エネルギーは太陽光と木質バイオマスを中心に導入量が伸びている。固定価格買取制度の認定を受けて運転を開始した発電設備の規模では、バイオマスが全国で第5位に入る(図8)。このほかに風力と小水力の取り組みも進行中だ。
風力発電は県の北部を走る四国山地の周辺や南部の太平洋沿岸が風況に恵まれている。一般に年間の平均風速が毎秒5メートル以上の場所で風力発電が可能だが、高知県内には7メートルを超える場所が広く分布している(図9)。
現在のところ北部の山岳地帯に、発電能力が10MWを超える風力発電所が2カ所ある。いずれも10年前の2006年に運転を開始した風力発電所だが、ようやく新しい発電所の開発プロジェクトが進んできた。
北部の大豊町(おおとよまち)では、東京電力系のユーラスエナジーグループが8基の大型風車を使って18MWの風力発電所を建設する。すでに環境影響評価の手続きを完了して、2016年内にも工事に着手する見通しだ。
南部の土佐清水市では、関西電力グループの関電エネルギーソリューションが風力発電所の建設計画を進めている。最大で30基の大型風車を設置して、発電能力は60MWに達する予定だ。現在は環境影響評価の途上にある。この2つの風力発電所が稼働すると、高知県の風力発電の導入量は一気に3倍に拡大する。
電力会社のグループ企業が大規模な風力発電所の建設を推進するのに対して、ダムや農業用水路を活用した小水力発電所は高知県が主導して開発中だ。北部の土佐町では、2つの川をつなぐ導水路を活用して発電所の建設工事が始まっている(図10)。
川に沿って新しい導水路を敷設して、上流と下流のあいだの落差で発電する。27メートルの落差を生かして、最大で670kWの電力を作ることができる。年間の発電量は300万kWhを想定している。2018年度に運転を開始する予定だ。
県の公営企業局が運営して、発電した電力は固定価格買取制度で売電する。年間の売電収入は8600万円(税抜き)を見込めるため、買取期間の20年間の累計では17億円にのぼる。地域の資源を活用した発電事業で得た収益は地域に還元する。太陽光発電で実証中のモデルを小水力発電にも展開していく。
*電子ブックレット「エネルギー列島2015年版 −四国編−」をダウンロード
2016年版(39)高知:「電力自給率100%へ、全国屈指のエネルギー資源を生かす」
2014年版(39)高知:「バイオマス発電で全国1位に、太陽と風にも恵まれた南国の地」
2013年版(39)高知:「カルスト高原に吹く風を受けて、電気料金のいらない町へ」
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