再生可能エネルギーで世界のGDPを0.6%押し上げ、日本は+2.3%でトップ:自然エネルギー(2/2 ページ)
全世界を対象に再生可能エネルギーの導入を推進する国際機関が経済効果を初めて試算した。世界のエネルギー消費量に占める再生可能エネルギーの比率を2倍に拡大させると、GDPが0.6%上昇する結果になった。2030年には再生可能エネルギー分野の雇用者数が2000万人を突破する。
雇用が増えて生活環境も改善する
再生可能エネルギーの導入量を拡大するメリットはGDPの増加だけではなく、生活環境(Welfare)を改善する効果もある。IRENAは経済面のほかに、雇用の増加や健康・教育費の増加といった社会面な影響、さらに環境面の影響を含めて、生活環境を指数で評価した(図4)。
その結果、2030年までに再生可能エネルギーを倍増させる2つのケースでは、生活環境の指数が2.7〜3.7%改善することがわかった。主要国のいずれにおいても指数は改善する(図5)。日本では平均を上回る3.3〜5.2%の改善効果が期待できる。最大の恩恵を受ける国はインドだ。
生活環境に影響を与える要因の1つは雇用である。2014年の時点で再生可能エネルギー分野の雇用者数は全世界で770万人にのぼった。最大は中国の339万人で、日本では21万8000人を数える(図6)。中国と日本の差はほぼ人口に比例している。ただしGDPの規模から考えれば、日本の雇用者数は中国と比べて圧倒的に少ない。
2030年になると、再生可能エネルギーの導入量を従来の見通しで予測した場合には、全世界の雇用者数は1350万人に増える。もし再生可能エネルギーの比率を倍増させることができれば、2000万人以上の雇用が見込める(図7)。その場合には日本でも約5倍に増えて100万人を超える予想だ。
雇用者数をエネルギーの種類別に見ると、2030年の時点でも化石燃料の分野が最も多くて2500〜2700万人程度にのぼる。これに対して再生可能エネルギーの比率を倍増させた場合には、化石燃料とほぼ同程度の雇用者数が期待できる(図8)。中でも太陽光とバイオマスの雇用者数が伸びる見通しだ。最も少ない風力でも原子力と比べると2倍以上の雇用を創出する。
関連記事
- 世界の発電量の22.8%が再生可能エネルギーに、風力・太陽光・水力が伸びる
2014年も世界各国で再生可能エネルギーの導入が活発に進んだ。火力や原子力を含む全世界の発電量に占める比率は22.8%へ上昇した。発電設備の容量は1年間に17%増えて、特に風力・太陽光・水力の伸びが大きい。国別では中国がトップを走り、日本は水力を除くと第6位に入る。 - 全世界で2040年までに稼働する発電設備、再生可能エネルギーが5割に
主要29カ国で構成するIEAが2040年までの世界のエネルギー動向を予測した。新興国を中心に電力の需要が増加するのに対応して、全世界で新たに稼働する発電設備の規模は72億kWにのぼる。そのうちの5割を再生可能エネルギーが占める。次いでガス火力、石炭火力の順に増えていく。 - 再生可能エネルギーを抑えて原子力を最大に、世界の潮流に逆行する日本の電力
電力会社による再生可能エネルギーの接続保留をきっかけに、解決に向けた議論が各方面で繰り広げられてきた。しかし政府と電力会社は旧態依然の考え方に固執したままである。再生可能エネルギーの導入量を抑制する一方で、停止中の原子力発電所は古い設備を含めてフル稼働させる方針だ。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.