バイオガス発電で食品リサイクルへ、1日80トンの廃棄物から940世帯分の電力:自然エネルギー(2/2 ページ)
毎日大量に発生する食品廃棄物を利用したバイオガス発電所の建設プロジェクトが静岡県の牧之原市で始まった。総工費18億円をかけてバイオガス発電設備と食品廃棄物の中間処理施設を建設する計画だ。地元の金融機関を中心に全額を民間企業が融資して、地域ぐるみで食品リサイクルに取り組む。
原子力発電所に隣接する牧之原市
牧之原市は全国一の茶の産地で知られている。市内には茶畑が多く、森林も広がっている。畜産業や食品加工業も盛んなことから、牧之原市は2009年に「バイオマスタウン構想」を策定してエネルギーの地産地消に取り組んできた(図3)。アーキアエナジーがバイオガス発電所の建設地を牧之原市に決めた理由の1つである。
牧之原市ではバイオマスタウン構想に続いて2013年には「エネルギータウン構想」を策定して、太陽光や風力、小水力や海洋エネルギーも含めて再生可能エネルギーの導入量を拡大するプロジェクトを推進している(図4)。
エネルギータウン構想を発表した2年前の2011年9月には、牧之原市議会が中部電力の「浜岡原子力発電所」の永久停止を決議した。浜岡原子力発電所が立地する御前崎市は牧之原市に隣接していて、市内で最も近い地域は原子力発電所から2キロメートルほどしか離れていない。牧之原市の全域が20キロメートル圏内に入る(図5)。
原子力発電所に代わる電源を再生可能エネルギーで拡大しながら、CO2(二酸化炭素)排出量の削減も図る。牧之原市では2050年度の市内のCO2排出量を2006年比で半減させることを目指している。そのために2015年度に3万トンの削減目標を掲げて、風力・バイオマス・太陽光・海洋エネルギーのプロジェクトに注力してきた(図6)。
ただし現在のところ必ずしも順調にプロジェクトが進んでいるわけではない。海洋エネルギーでは牧之原市と御前崎市にまたがる「御前崎港」の沖合に洋上風力発電所を建設する計画が進んでいたが、航空自衛隊のレーダーに影響を与えることが判明して計画を断念している。そうした中でバイオガス発電所が運転を開始すれば、2050年度のCO2削減目標に向けて一歩前進する。
関連記事
- 食品廃棄物からバイオガスで発電、500世帯分の電力と温水・燃料を作る
大阪府で初めて固定価格買取制度の適用を受けたバイオガス発電プラントが運転を開始した。食品工場から大量に発生する廃棄物を1日あたり17トンも処理して、250kWの電力のほかに温水と燃料を作ることができる。発電プラントにはドイツ製のシステムを採用した。 - バイオガス発電で生まれる液体肥料、小麦の栽培に使ってリサイクル
生ごみなどの食品廃棄物を発酵させたバイオガスを燃料に利用する発電設備が各地に広がってきた。バイオガスを生成した後に残る液体には窒素やリンが含まれていて、有機性の液体肥料としても利用価値が高い。三重県の農地で小麦の栽培に利用する実証試験が始まる。 - 高速メタン発酵でバイオマス発電、食品廃棄物から1450世帯分の電力
秋田市で排出する大量の食品廃棄物を利用して、メタン発酵ガスによるバイオマス発電が2017年に始まる。市内の飲食店などから収集した廃棄物を高速で発酵させてガスを生成できるシステムを導入する計画だ。従来は焼却処理していた食品廃棄物が地域の新しい電力源に生まれ変わる。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.