東京電力管内に攻め込む中部電力、首都圏ガス9社に電力を卸売り:電力供給サービス
2016年4月からの電力、そして2017年から始まるガス小売の全面自由化に向けて、電力会社と都市ガス会社の連携が進んでいる。中部電力は都市ガス各社に販売チャネルを持つ国際石油開発帝石と提携して、都市ガス会社に電力を卸販売する。ライバルの東京電力管内で電力とガスのセット販売を可能にし、顧客確保に注力していく。
電力・ガスの小売り全面自由化に向けて、エネルギー各社では利用者の多様化するニーズに対応するため、さまざまな取り組みを進めている。こうした中、中部電力と国際石油開発帝石(INPEX)は「電力卸販売の共同実施に向けた基本合意書」を2015年7月に締結。INPEXが天然ガスを供給している都市ガス事業者を対象に、電力卸販売の共同提案を進めてきた。
今回この提案に賛同した首都圏の都市ガス事業者9社との間で電力卸販売に関する業務提携に合意し、都市ガス事業者の約30万件の顧客に電力を提供することが可能となった(図1)。中部電力は30万件のうち、2016年度は2万件の新規顧客の獲得を目指すとしている。
基本合意書は中部電力と同社子会社のダイヤモンドパワー(DPC)およびINPEXが、都市ガス事業者へ電力を卸販売し、同事業者が電力小売り事業を実施する際の役割を取り決めたもの。具体的には中部電力とDPCが電源調達、需給監視業務などを行い、INPEXは都市ガス事業者のニーズに対応する調整窓口、顧客管理システムのサポートなどを担当する。都市ガス事業者は小売電気事業者登録したうえで、順次顧客に電力を販売していくという仕組みだ(図2)。
今回、合意したのは足利ガス(供給区域=栃木県足利市、顧客数約1万7000件)、伊勢崎ガス(群馬県伊勢崎市、約1万1000件)、入間ガス(埼玉県入間市、飯能市および狭山市の一部、約1万8000件)、青梅ガス(東京都青梅市、約2万1000件)、桐生ガス(群馬県桐生市、みどり市および太田市の一部、約2万6000件)、埼玉ガス(埼玉県深谷市の一部、約7000件)、佐野ガス(栃木県佐野市、約9000件)、日高都市ガス(埼玉県日高市の一部、約7000件)、武州ガス(埼玉県川越市、所沢市、狭山市、ふじみ野市、鶴ヶ島市、日高市、飯能市、川島町、吉見町、小川町および毛呂山町、約20万6000件)の9事業者。
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