夢の天然ガス資源「表層型メタンハイドレート」、日本近海700カ所以上に存在か:エネルギー供給
国産の天然ガス資源として注目を集める「メタンハイドレート」。資源エネルギー庁は日本近海に眠る表層型メタンハイドレートの埋蔵量の把握に向けて調査を進めている。島根県・新潟県沖で調査を行った結果、表層型メタンハイドレートが存在する可能性がある海底部の特異構造を700カ所以上発見したという。
資源エネルギー庁は「海洋基本計画」に基づき、表層型メタンハイドレートの資源量把握に向けて、2014年度から約3年にわたって日本近海の調査を実施している。2015年度は、表層型メタンハイドレートが存在する可能性がある特異的な構造(ガスチムニー構造)の内部におけるメタンハイドレートの様子をより詳しく把握するため、島根県隠岐周辺および新潟県上越沖で、合計約30カ所の掘削調査を行った。
この調査により取得した地質サンプルを観察した結果、メタンハイドレートは、厚さ数十cm(センチメートル)〜数m(メートル)以上の柱状で採取された部分がある一方、泥に混ざって、直径1cm未満〜数cmの粒状で存在している部分もあるなど、さまざまな形状を示すことが分かった。また、同一のガスチムニー構造から取得されたサンプルであっても、サンプル毎のメタンハイドレートの存在の形態(深度、形状、量)は、取得された場所によって大きく異なることも明らかになった(図1)。
この他、隠岐周辺、上越沖、秋田・山形沖、日高沖、北海道周辺沖で実施した広域地質調査ではメタンハイドレートが存在する可能性のある海域を把握するため、調査船から音波を発信し、海底の地形や海底下浅層部の地質構造データを取得した。解析の結果、ガスチムニー構造が新たに771カ所確認された。
さらに隠岐周辺、上越沖、秋田・山形沖で実施した詳細地質調査では、自律型巡航探査機(AUV)に設置された機器から音波を発信し、より精緻な海底地形や海底下浅層部の地質構造、海底面の状態のデータを取得している。
詳細地質調査と同じ海域で行った環境データ取得のための基礎調査では、無人探査機による海底観察により、海底付近の微地形、表層型メタンハイドレートの産状、海底付近の生物の生息状況などを解明するとともに、海水や海底表層の堆積物を採取して成分を分析した。また、以前設置した長期モニタリング装置を回収している。
今後の予定としてはこれまでに収集したさまざまな測定データや地質サンプルなどを利用し、専門家による分析作業、解析作業を加速する。これによりメタンハイドレートの商業化に最低限必要となる埋蔵量および分布状況などの検証を行うとともに、その結果を踏まえて表層型メタンハイドレートを回収する技術の調査や技術開発手法を検討していく計画だ。
メタンハイドレートとは、メタンと水が低温・高圧の状態で結晶化した物質。日本の周辺海域には相当の量が存在していることが見込まれており、将来の天然ガス資源として期待されている。
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