強風でも発電できる「台風発電」実現へ、マグナス力を利用した垂直軸型:蓄電・発電機器(2/2 ページ)
ベンチャー企業のチャレナジーが取り組む「台風発電」のクラウドファンディングが順調だ。既に目標金額としていた200万円を突破し、2016年夏に実施する屋外実証用の費用を獲得できる見込みだ。
「垂直軸型マグナス風力発電機」を実用化へ
同社が取り組む「垂直軸型マグナス風力発電機」は、円筒を気流中で回転させた時に発生するマグナス力を利用した風力発電機である。マグナス力とは速度を持った空気の気流の中を回転する円柱もしくは球が存在する時、この円柱や球の回転運動に気流が引きづられ移動方向もしくは流れの方向に対し、垂直に働く力のことをいう。例えば、左から右に一様に流れる気流があったとして、そこの中に時計回りで回転する円柱があったとすると、マグナス力は上方向に働く。この一定方向に流れる気流(風)に対し、円筒形のものを回転させることで揚力を得て、回転する風力発電がマグナス風力発電である。
既にマグナス力を生かして回転する風力発電は、世の中に存在しているが、チャレナジーが取り組んでいるのは、垂直軸型であることが特徴であるといえる。垂直軸型を採用することで、設置スペースを小さくでき、安全性の向上や静音化などの効果も期待できるという。また、円筒の回転をコントロールすることで、発電量を制御できるために、台風など強風環境でも制御した発電を行うことが可能だとしている。
屋外でのフィールドテスト用
同社では、これまで垂直軸型マグナス風力発電機の試作機を開発し、屋内での実験を行ってきた。しかし、製品化を目指し、屋外でフィールドテストを行うために今回クラウドファンディングに募集することを決めたという。
2016年の夏、沖縄県南城市にフィールドテスト機を建設し、世界初の「台風発電実証実験」に取り組む計画だ。今回の実証実験では、直径3メートル×高さ3メートルの大きさで、発電量1kW(キロワット)のフィールドテスト機を設置するという。そして、台風を迎え撃ち、発電量などのさまざまなデータを取得し、大型の量産機を開発することを目指す。設置するテスト機の設計・製造・組立、現地の基礎工事などの準備費用を含め、約1500万円の費用が必要なため、クラウドファンディングで集めた費用をその一部として使うとしている。
同ファンディングは2016年1月18日から開始されているが、既に250万円以上の金額が集まっており、目標としていた200万円を突破している(図2)。
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