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バイオマス発電+人工光合成で一歩先へ、海洋エネルギーの挑戦も続くエネルギー列島2015年版(41)佐賀(3/4 ページ)

家庭から出る廃棄物を活用するプロジェクトが佐賀市で進んでいる。下水と生ごみから電力を作り、同時に発生するCO2を人工光合成に利用して野菜の栽培や藻類の培養に生かす。沖合では海洋エネルギーの実証実験を進める一方、田んぼでは稲を栽培しながら太陽光発電に取り組む。

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イカの産地で海洋エネルギーに挑戦

 佐賀県はバイオマスと並んで海洋エネルギーの開発にも意欲的に取り組んでいる。2015年度に開始した「佐賀県海エネ産業推進事業」では、県の周囲に存在する海洋エネルギーを生かして、漁業・造船業・建設業・観光業の活性化を目指す。この事業モデルを「佐賀モデル」と名付けて、全国をリードする新しい産業を形成していく(図5)。


図5 海洋再生可能エネルギー産業の創出を目指す「佐賀モデル」の全体像(画像をクリックすると拡大)。出典:佐賀県農林水産商工部

 海洋エネルギーの拠点になるのは、イカの産地として知られる唐津市の沖合に浮かぶ加部島(かべしま)の沖合だ(図6)。日本海から吹きつける風は平均で7メートル/秒に達して、風力発電に必要な5メートル/秒を軽くクリアする。さらに潮の流れも速い。国から海洋エネルギーの実証フィールドに選ばれて、浮体式の洋上風力発電と潮流発電に挑む。


図6 唐津市加部島沖の実証フィールド。出典:佐賀県農林水産商工部

 実は2014年に浮体式の潮流・風力ハイブリッド発電システムを加部島の沖合に設置する計画が進んでいた。浮体の上部に垂直軸で回転する風車を搭載する一方、水中に沈む下部には潮流の水圧で回転する水車が付いている(図7)。潮流と風力の両方で発電することができるため、天候の影響を受けにくい利点がある。


図7 浮体式の潮流・風力ハイブリッド発電システム。出典:三井海洋開発

 しかし現地で設置工事の途中に水没してしまい、その後はプロジェクトを再開するめどが立っていない。このハイブリッド発電システムは高さが69メートルで、重量が1000トンにも及ぶ巨大な設備である。悪天候のために瞬間風速が20メートル/秒を超える状況になり、強風と高波の影響で水没したとみられている。

 それでも海洋エネルギーにかける佐賀県の意気込みは衰えていない。同じ加部島沖の実証フィールドで、浮体式の気象・海象観測機器を使った運用テストを2015年11月に実施した(図8)。


図8 実証フィールドの運用テストに利用した気象・海象観測機器。出典:佐賀県農林水産商工部

 高さは6メートル、重量が1.6トンの観測機器を海面に浮かべて、風速・風向のほかに潮流の速さと向き、波の高さ・向き・周期を測定することができる。この観測データを事業者に提供して、洋上風力発電や潮流発電の開発計画に役立てる考えだ。失敗を成功につなげて、海洋エネルギーの分野でも佐賀独自のモデルで新しい産業を発展させていく。

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