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潮流発電の実用化へ前進、新潟・粟島沖で流速を確認:自然エネルギー(2/2 ページ)
新潟県は国の海洋再生可能エネルギーの実証フィールドになっている粟島の沖合で、2015年7月〜12月の5カ月間に流況調査を実施した。計測したデータを分析した結果、夏に速い海流があることを確認した。実用化に向けて遅い流速でも安定して発電できる装置の開発を進めて実証試験に取り組む。
低い流速でも潮流発電を可能に
新潟県は平均流速が最も速かった8月の計測値と流況モデルをもとに、12カ月間の平均流速と最大流速をシミュレーションで計算した。夏を中心に4〜10月の春から秋にかけて平均流速が速くなる一方、冬の11〜3月には遅くなる(図5)。ただし西側では1月に平均流速が最大になり、冬でも潮の流れが速くなる時期が見込まれる。
海上保安庁が1999〜2001年度に実施した潮流発電の研究によると、流速が1メートル/秒を超えるとエネルギー量が増え始めて、2メートル/秒くらいで最大に達する(図6)。流速が1メートル/秒以上になる海域が潮流発電には望ましいと考えられる。ただし日本の近海で潮流が1メートル/秒を超える海域は極めて少なく、粟島沖でも最大0.83メートル/秒にとどまる。実用化には低速でも発電できる装置の開発が不可欠になる。
新潟県は日本大学と共同で2013年度から、低速の潮流でも効率的に回転する潮流発電機の開発を進めてきた。垂直に設置した4枚の羽根を潮流で回転させて発電する仕組みだ(図7)。2014年度には小型のプロトタイプを使って、粟島沖で2日間の実証試験を実施している。今後もプロトタイプの発電機を改良して実証試験に取り組んでいく。
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