空気で発電「亜鉛電池」、家電が直接つながる:スマートエネルギーWeek 2016(3/3 ページ)
あらかじめ充電しておかなくとも非常時に利用できる電池が注目を集めている。先行するのはマグネシウム空気電池。これに対抗する「空気亜鉛電池」が2016年5月にも登場する。水を使わずに発電し、家電用のコンセントを外付けで備えた。
「空気亜鉛電池」、古い技術を新たな製品へ
エイターナスは、亜鉛と空気中の酸素が反応することで電流を生み出す空気亜鉛電池だ。空気亜鉛電池は、空気金属電池としては最も長い歴史があり、発明されてから100年以上経過している。国内での主な用途は補聴器用のボタン形電池だ*4)。
ボタン形電池では次のような反応が起こる。正極では酸素(O2)と水(H2O)、電子(e−)から水酸化物イオン(OH−)が生じ、負極では亜鉛が2段階の反応で酸化亜鉛に変化する。
正極 O2+2H2O+4e− → 4OH−
負極 Zn+4OH− → Zn(OH)42−+2e−、Zn(OH)42− → ZnO+H2O+2OH−
全反応 2Zn+O2 → 2ZnO
空気亜鉛電池では構造上、負極の亜鉛と電解質だけが必要であり、正極を用意する必要がない。このため、電池の重量を軽くできる(図5)。ボタン形電池では正極のために使っていた空間を亜鉛に振り分けるため、容量を大きくできた。これはエイターナスでも同じだ。
*4) 国内では1980年代から利用されている。種別記号は「PR」。ゲル状の亜鉛を用い、電圧は1.4V。他のボタン形電池よりも容量が大きく、軽い。つまりエネルギー密度が最も高い。
韓国発の新技術
エイターナスの基になった空気亜鉛電池を開発したのは韓国EMW Energy。同社は2008年に米国で空気亜鉛電池の特許を出願している。「韓国では軍用無線機を動かすためにEMW Energyの電池が使われている。信頼性や容量などの条件を満たしており、今回のエイターナスで民生品にも広がった形だ」(西村氏)。
軍用品は図6の手前に示したように強固な外装を備え、重量もある。これに対して、エイターナスは2.5kgと軽い。寸法は、18cm×17cm×7.5cm。横倒しに置くと、A5判とほぼ同じ面積を占める。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
マグネシウム空気電池が家庭でも買える、水で発電し劣化も少ない
古河電池は「第7回 国際二次電池展」で2016年2月29日に発売したばかりの家庭向け非常用マグネシウム空気電池を出展。非常用電源として家庭への常備を訴えた。お風呂の残り湯でも発電するマグネシウム電池、スマホ30台をフル充電
藤倉ゴム工業は「第7回 国際二次電池展」でマグネシウム空気電池「WattSatt」を展示した。水を用意するだけで発電可能で、スマートフォンを30台充電できるという。2016年夏に発売する予定だ。- 空気と水とアルミで1600km走る、変わるか電気自動車
米AlcoaとイスラエルPhinergyは、2014年6月、アルミニウム空気電池で走行する電気自動車を公開した。金属アルミニウム自体を電気の「缶詰」として利用するため、充電せずに走行する電気自動車となった。