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CO2フリーの水素サプライチェーンをどうやって構築するのか、川崎重工の挑戦スマートエネルギーWeek 2016(2/3 ページ)

「水素社会の実現」に向けたさまざまな技術開発が進んでいるが、1つのポイントだと見られているのが、使用する大量の水素をどうやって運ぶのか、という点だ。2016年3月2日に開催された「FC EXPO 2016」の技術セミナーでは、川崎重工業執行役員技術開発本部副本部長原田英一氏が登壇し「水素エネルギーサプライチェーンの実現に向けた川崎重工の取り組み」をテーマに講演した。

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オーストラリアで褐炭を液体水素に変えて輸送

 未利用資源である褐炭とは、若い石炭で世界に広く大量に埋蔵されている。水分量が50〜60%と多く、乾燥すると自然発火しやすいため、輸送が困難で、現地の発電でしか利用されていない。輸送できないため、海外取引は皆無であり採掘権だけの未利用資源である。100種類以上あるといわれる水素の製造方法の中でも、褐炭からの水素製造は最も経済的な方法の1つとなっている。オーストラリアには広く褐炭層があり。日本の総発電量の240年分に相当する量が埋蔵しているとみられている。

 資源(褐炭)を供給するオーストラリア側も「水素製造・輸送産業による雇用創出や褐炭の有効利用、クリーンエネルギーの輸出国になれるなどの理由からこうした構想を高く評価している」(原田氏)という。

 この褐炭から取り出した水素をオーストラリアからは液化水素として運搬する。液化水素は−253度の極低温であり、気体の800分の1の体積になる。既に産業用利用やロケット燃料として実用化済みの輸送媒体であり、高純度で運搬後は蒸発させるだけで燃料電池に供給可能となるなど精製が不要という特徴がある。川崎重工では実績のあるLNG船や液化水素タンクの技術を応用して世界初の液化水素運搬船の開発に取り組んでいるところだ。

 こうして製造・運搬してきた水素の利用用途は、例えば770トン/日の規模ではFCV300万台または火力発電100万kW相当の燃料に相当する。この水素コストは29.8円/N立方メートルとなる。発電コストで比較すると化石燃料よりは高いが、CO2フリーエネルギーの中では、再生可能エネルギーより安く、かつ安定で大量に利用可能であるというメリットがある(図2)。

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図2 CO2フリー水素チェーンの意義と効果(クリックで拡大)出典:川崎重工

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