人口2000人の村に木質バイオマスでガス化発電、電力の自給率100%へ:自然エネルギー(2/2 ページ)
日本有数の豪雪地で知られる長野県の栄村で木質バイオマス発電所の建設計画が始まった。村の森林組合が地域の間伐材から木質チップを製造して供給する。年間の発電量は村の全世帯の電力使用量に匹敵して、発電時の廃熱は融雪に利用できる。発電と林業で新たな雇用を生み出す効果も見込める。
ガス化発電で設備がコンパクトに
栄村に導入する設備は木質バイオマスをガス化してから発電する方式だ(図3)。通常の木質バイオマス発電では大型のボイラーで大量の蒸気を発生させてタービンを回すが、ガス化して発電する方式だとボイラーが不要で設備全体がコンパクトになる。建設用地が狭くて済み、工事期間も短くなるメリットがある。
木質チップを燃焼させてガスを発生させるためには、ガス化装置の中で800度以上に加熱する必要がある。発生したガスは40度くらいまで冷却してからガスエンジン発電機に供給する仕組みだ。さらに発電で高温になったガスエンジンをラジエータで冷却して廃熱する。
発電に伴う廃熱は冬のあいだの融雪にも利用できる。発電所から地下に配管を通せば、周辺の製材工場を含めて施設内に積もった雪を溶かすことが可能になる。このほかにガス化した後の炭を地域の融雪に利用することも検討していく。
同様の取り組みは同じ長野県の南部で2015年6月に始まっている。飯田市の娯楽施設内で稼働する「かぶちゃん村森の発電所」である。同じ仕組みの木質バイオマスガス化発電装置を導入して360kWの発電能力がある(図4)。栄村では500kWのガスエンジン発電機1台の構成だが、かぶちゃん村では180kWの発電機2台を組み合わせた。
年間の発電量は285万kWhで、廃熱は木質チップの乾燥と近くで運営するいちご畑のハウスで利用する。発電後の炭は耕作地の土壌改良材として使っている。飯田市でも面積の84%を森林が占めていて、地域で発生する間伐材を利用した木質バイオマス発電は林業の活性化に有効だ。
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