日本最大級のダムで水力発電所が全面稼働、3度の延期を乗り越えて:電力供給サービス(2/2 ページ)
険しい山が連なる岐阜県の西部で大規模な水力発電所が運転を開始した。貯水量が日本で最大のダムの水を利用して16万kWの電力を供給できる。中部電力が2009年に着工したものの、地下設備に必要な掘削工事が難航したほか、発電機に不具合が生じて、予定から1年9カ月の遅れで稼働した。
試運転中に発電機の温度が異常に上昇
徳山水力発電所は1・2号機ともに2014年6月に運転を開始する予定だった。2号機は予定よりも1カ月早く稼働できたが、1号機は1年9カ月も遅れて稼働にこぎつけた。その間に運転開始を3度も延期している。
1度目の延期は着工から約2年後の2011年11月のことで、地下の掘削工事が難航したことによる。徳山水力発電所の設備は水車と発電機を設置する地下室のほか、ダムから水を取り組む導水路や発電後の水を川に送り出す放水路など、大半の設備を地下に埋設する構造になっている(図4)。
地下に設備を建設するためには岩盤まで掘削する必要があるが、事前の調査よりも岩盤の位置が深かったために工事期間が延びてしまった(図5)。その間に豪雪で工事を中断した時期もあり、1号機の運転開始を当初の予定から1年先の2015年6月に延期することになった。
その後も営業運転を開始する直前の試運転中に発電機に不具合が発生した。水車と発電機の回転部分を支える「スラスト軸受」の温度が上昇したためだ。新たに冷却器を増設する対策などを実施して、3カ月後の2015年9月に営業運転を開始することになった。2度目の延期である。
ところが対策を実施した後もスラスト軸受の温度上昇は収まらなかった。3度目の延期を余儀なくされて、運転開始を半年後の2016年3月に再設定した。その間に原因を調査した結果、回転部に微妙な突起があることが明らかになった(図6)。
回転による摩擦熱で突起が膨張して温度を上昇させていた。突起を除去する対策を施して、ようやく正常に運転を開始することができた。2009年10月の着工から6年半を経て全面稼働にこぎつけた。それでもCO2(二酸化炭素)を排出しない大規模な水力発電所の効果は大きい。
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