「グリーン」を目指すワタミ、狙いは高齢者世帯――電源の3割はFIT電気:電気料金の新プラン検証シリーズ(30)(2/2 ページ)
外食チェーンなどを展開するワタミグループは、家庭向け電力小売事業に参入することを発表した。2016年3月から受け付けを開始し2016年5月から電力の供給を開始する。
300kWh以上では10%の価格削減だが……
ワタミF&Eでは今回、参入地域の内、東京電力管内のみ料金プランを発表した。電力料金プランを見てみると、基本料金については東京電力の従量電灯Bプランと同額となっている。電力使用量については120kWh(キロワット時)までが1kWh当たり19.37円、120〜300kWhまでが1kWh当たり25.83円、300kWh以上が1kWh当たり26.94円となっている(図2)。
これらを見ると割引率は300kWhまでの2プランでは東京電力の現行プランと比較して0.3%減、300kWh以上は10%減となっており、年間割引額も支払い電力料金が多い方がよりお得なプランとなっているように見える(図2)。
ワタミの勝算は「第1段階料金」か
現行の東京電力のプランと比較すると、電力使用量の多い世帯への提案が中心になりそうに見えるが、これが新規参入企業などの電力料金プランと比較した場合、特徴が見えてくる。電力小売への新規参入企業の多くは電力消費量が多い世帯に狙いを絞っている。同じ託送料金や調達原価を負担するのであれば、より多くの金額を支払ってくれる顧客に特化した方が得するからだ。そのため300kWh以上の世帯を狙った提案が大半であり、これらの料金プランを見ると、ワタミの出した価格は各社のプランに埋没してしまうようにも見える。
一方で、現行の電力料金である3段階制はそもそもの狙いとして第1段階においては一般家庭の最低限の電力生活を保証するためにもともとの値段を安くおさえており、東京電力などにとっても利益の出るような価格設定にはなっていない。ただ、ワタミの料金プランでは小さい差ではあるが、この第1段階での料金プランで最低クラスの値付けをしていることが特徴だ。
これらの条件を合わせて考えると、ワタミが主戦場として考えているのは電力をあまり使わない世帯であるといえそうだ。同社の「宅食サービス」は高齢者単身世帯が多く利用しているといわれているが「おはようメール」と、これらの電力料金のお得感を組み合わせることで、それほど電力を利用しない高齢者世帯での電力販売を進めていく。
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