明かりと情報が途切れない街へ、被災地でエネルギー管理システムが稼働を開始:スマートシティ
東日本大震災の被災地である石巻市で、再生可能エネルギーを活用したスマートコミュニティ事業が進んでいる。石巻市、東北電力、東芝の3者が取り組んでいるもので、このほど地域エネルギー管理システムの運用が始まった。
宮城県石巻市、東北電力、東芝の3者が「平成25年度スマートコミュニティ導入促進事業費補助金(スマートコミュニティ導入促進事業)」による補助金交付の採択以降、石巻市震災復興基本計画の重点プロジェクトとして共同で推進してきたスマートコミュニティ事業で、このほど地域エネルギー管理システム(CEMS)の運用が始まった。
この事業は東日本大震災の被災地である石巻市で、再生可能エネルギーを活用した「低炭素なエコタウン」と災害時に「灯りと情報が途切れない安全・安心なまちづくり」を目指して、モデル地区において電力の受給バランスなどの調整を図るCEMSを導入するものだ(図1)。
石巻市では有事の際に市内の防災拠点となる公共施設に太陽光発電や蓄電池などのエネルギー設備を整備するとともに、市内の一般家庭、事業所へエネルギー関連設備の導入促進を図るため、独自の補助制度を整備して再生可能エネルギーの普及拡大に取り組んできた。東北電力は電力系統の安定化を図るため、系統安定化制御装置、蓄電池設備、太陽光発電設備などで構成されるシステムを導入している。
また、東芝は計画全体を管理するとともに、需要家側のエネルギー情報を束ね需要調整を行うシステム(需要家統合システム)の導入と、施設への設備導入を行い、分散する防災拠点となる公共施設のエネルギー情報(太陽光発電設備、蓄電設備)の統合的な管理、モデル地区の復興公営住宅でのエネルギー見える化を実現している。この両者のシステムは地域エネルギー管理システムとして協調連携し、共同で運営していく方針だ。
これらの取り組みにより、環境に配慮した生活が送れる街づくりと、情報配信によるコミュニケーションの活性化がさらに進むものと期待されている。
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