バイオガスで下水処理場に電力と熱、高純度に精製してエネルギー効率84%:自然エネルギー(2/2 ページ)
兵庫県の神戸市にある下水処理場でバイオガス発電が始まった。下水の処理で発生するバイオガスを98%の高純度に精製した「こうべバイオガス」を燃料に利用する点が特徴だ。電力と熱を同時に作るコージェネレーションシステム24台を使って、1300世帯分の電力と1600世帯分の熱を供給できる。
木質バイオマスを混合してガス量を増やす
神戸市は下水の処理能力が最大の「東灘処理場」で2008年に初めて「こうべバイオガス」の製造を開始した。高純度に精製することによって、大阪ガスの導管を通じて一般家庭に都市ガスとして供給している。さらに併設の「こうべバイオガスステーション」で天然ガス自動車に燃料を供給することもできる(図4)。
東灘処理場では2011年度から「KOBEグリーン・スイーツ プロジェクト」と呼ぶ木質バイオマスと組み合わせたバイオガスの実証研究にも取り組んでいる。近隣の六甲山などから集めた間伐材をはじめとする木質系のバイオマス(グリーンバイオ)を下水の汚泥に混合する。下水で収集できる食品系のバイオマス(スイーツバイオ)と合わせて、バイオガスの製造量を増やす試みだ(図5)。
こうべバイオガスを利用した発電は「垂水処理場」が最初の導入事例である。垂水処理場では太陽光発電とバイオガス発電を同時に実施する「こうべWエコ発電プロジェクト」を2014年に開始している(図6)。太陽光発電で2000kW(2メガワット)、バイオガス発電で350kWの電力を供給できる。年間の発電量は両方を合わせると西部処理場とほぼ同じ450万kWhになる。
神戸市は下水道の資源を活用したエネルギー事業を今後も拡大していく。すでに「こうべバイオガス」の事業を実施中の3カ所に加えて、残る4カ所の下水処理場にもバイオガス事業を展開する方針だ(図7)。下水の処理に伴って発生する消化ガスを2025年度までに100%フルに活用することが目標である。
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