新たな消化ガス発電施設が稼働したのは栃木県最大の下水処理量がある川田水再生センター(宇都宮市)内で、下水処理施設から発生する消化ガスを活用したリン酸形燃料電池による発電方式では国内最大級となる。同消化ガス発電施設建設など工事はプラントエンジニアリング事業を展開するメタウォーターが代表構成員として、また宇都宮市内の電気工事業者である協新電工および美工電気が構成員となった建設共同企業体で受注し、2014年から工事を進めてきたものだ。
川田水再生センターでは下水処理の過程で年間約330万N立方メートルのバイオガス(メタンを主成分とした可燃性のガス)が発生している。宇都宮市下水道局はこのバイオガスを有効活用するため、事業費17億3880万円をかけ、リン酸形燃料電池を利用した発電設備を導入した。燃料電池発電設備は下水汚泥から発生するバイオガスの主成分であるメタンから水素を取り出し、空気中の酸素と化学的に反応させることで、発電装置となる。発電効率が高く、メンテナンスが容易、化学反応を利用して発電するため騒音・振動がほとんどなく排ガスの発生もないなどの特徴がある。
今回の消化ガス発電設備の発電能力は840kW(105kW×8台)で、年間発電電力量(最大)は約717万kWh/年(一般家庭の約2000世帯分の年間電力使用量に相当)。同水道局では今回の取り組みで下水道資源の有効活用と発電電力を売電することでの収益につなげていく考えだ(図1)。
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