世界27工場の電力使用量を一括削減、省エネ施策を「見える化」で横展開:エネルギー管理
富士通はスタンレー電気が所有する世界の主要27工場の電力使用量を、リアルタイムに本社に集約し集中監視できるシステムを構築した。2015年7月から各工場に順次導入しており、現在は国内全工場で稼働を開始している。
富士通が電力使用量の監視システムを導入したのは、スタンレー電気の国内13拠点、海外14拠点の合計27工場。スタンレー電気は環境長期経営計画(2010年4月〜2020年3月)で温室効果ガス排出量削減目標を掲げ、工場や事務所などグループ会社を含む国内・海外全拠点でエネルギー削減活動を積極的に進めている。
そのため、目標達成に向けて、従来のように拠点担当者だけが数値を把握し対策を考えるのではなく、全社員が改善活動に取り組むことや、電力消費の実績把握を週や月単位ではなく、日や時間でとらえることで早期に対策を打つことができる仕組みづくりを検討してきた。特に工場では、工場間で情報共有を行い、成果を上げた対策を積極的に他工場に展開しているという。
これらのニーズに対し今回富士通は、スタンレー電気の主要工場に対し、社員全員が電力消費のリアルタイムな実態や省エネ目標の達成状況、工場間での比較など、さまざまな切り口で見える化できるシステムを構築した。
同システムでは富士通の「FUJITSU Sustainability Solution 環境経営ダッシュボード」により、リアルタイム・日・月とさまざまな時間軸で、電力使用状況や目標達成状況を、工場単位もしくは全工場単位で見ることが可能になっている(図1)。これらの情報を直感的に把握できるよう、地図上に各工場をマッピングし、目標差異の状況を色別で表示したり、月次目標達成見込みの状況をグラフィカルにランキング表示したりする。また、ドリルダウン形式で世界地図および日本地図での全体の俯瞰(ふかん)、工場ごとの詳細状況を把握することもできる。
環境経営ダッシュボードでは、各工場で独自に導入したさまざまなメーカーの電力監視システムやセンサーのデータを、インタフェースを変換し統一化したうえで一カ所に集約できる。この他、電力使用状況の変化や改善活動の進捗状況など、工場責任者から経営層や他工場に対し適宜報告および情報発信ができるように、自由にテキストメモを画面に掲載できるコミュニケーション機能を搭載している。これにより、シームレスな意思疎通が可能となるとともに、各工場への水平展開による改善活動の加速化が期待できる。
システム導入後、スタンレー電気では、電力使用の見直しや改善施策の共有・水平展開などにより、各工場にて電力使用量の削減が進んでいるという。富士通では、電力以外にもさまざまな運用課題の解決に向けた機能拡張が可能な「環境経営ダッシュボード」を活用し、製造コスト低減や納期厳守、歩留り低減や品質向上などの生産活動全般の改善につながる取り組みを支援していく方針だ。
関連記事
- 季節風と“見える化”で工場を省エネに、夏場の空調電力を17%削減
YKK APは富山県の生産工場にエネルギー消費量を“見える化”するシステムを導入。このシステムを活用し、春から夏に吹く季節風を工場内に取り入れて夏場の空調システムの電力消費量を17%削減した。 - 電力の購入量を9割以上も削減できる新工場、生産改革と省エネを一挙に実施
コマツが石川県の主力組立工場を建て替えた。最新の省エネ機器を採用して電力の使用量を半分以下に抑えたうえで、生産改革による床面積の低減と再生可能エネルギーの導入を進めて、電力の購入量を2010年度の実績から9割以上も削減する計画だ。電力会社に依存しない製造業の好例である。 - 「地中熱」で工場のコストは削減できる――富士通・長野工場の取り組み
富士通・長野工場が自然エネルギー活用システムの運用を開始した。小規模運用が多かった地中熱採熱システムを大規模な工場敷地内で導入し、コスト削減とCO2削減を狙う。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.