北ガスが電力小売対応で高効率ガス発電設備を建設、地産地消を強化:電力供給サービス
北海道ガスは、電力小売事業の電源確保のために、発電設備の強化に取り組む。同社の石狩LNG基地内に高効率ガス発電設備を建設する。
北海道ガスでは、天然ガスインフラを活用した分散型エネルギー社会と、系統ネットワークとの最適調和を目指し、熱と電気の相互融通、ITの高度利用を通じて「効率性」「経済性」「環境性」「持続性」に優れた、新たなエネルギーシステムの構築に取り組んでいる(図1)。
2016年4月からは家庭用の低圧向けを含む電力小売に参入。「北ガスの電気」として電力の地産地消への取り組みを強化している。これらの電力の販売を強化する中で、新たに季節や時間に合わせて機動的に運転可能な電源として高効率ガス発電設備を建設することを決めた。同設備は、同時同量を確保する調整電源としても活用し、再生可能エネルギーの変動を吸収する。同設備の稼働により、外部調達電源と自社電源の最適化を実現し、効率的で安定的な電源ポートフォリオを構築していく方針だ(図2)。
世界最高効率のガスエンジン
今回同社が導入を決めたのは、発電容量が7万8000kW(キロワット)の高効率発電設備で、7800kWのガスエンジンを10台設置する。発電効率は約50%相当で、総合エネルギー効率は約80%(発電時の発熱をLNG基地内で使用)に達している。ガス製造過程における排熱利用により燃料費(エネルギー消費量)は最大で約70%削減できる他、CO2削減効果は年間2万4400トンになるという。また従来発電とのCO2発生量についても年間約20万トンの削減効果があるとしている。
新設備は、起動後10分以内に最大出力に達し、幅広い負荷範囲で高効率発電を可能としている。2016年10月を着工予定としており、運転開始は2018年10月を計画している。総事業費や約100億円となる見込みだ。
電源の90%以上を道内で調達へ
新設備稼働後は、電源構成として61%を高効率ガス発電設備で担う予定だ。木質バイオマスや水力などの再生可能エネルギーが26%、天然ガスコージェネレーションなどを行う小樽エネルギーセンターが1%、道内の自家発電(購入契約)が9%となり、90%以上を道内の発電で賄うことになるという(図4)。
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