風力発電の導入量が全国1位、日本最大のメガソーラーも動き出す:エネルギー列島2016年版(2)青森(3/4 ページ)
青森県ではエネルギーの自給率と利用効率を高めて化石燃料の依存率を引き下げる「トリプル50」を推進中だ。風力と太陽光を中心に再生可能エネルギーの発電量を2030年度までに5倍に増やす。巨大な風力発電所とメガソーラーが運転を開始して、電力から水素を製造するプロジェクトも始まる。
六ヶ所村が再エネと水素の町に
六ヶ所村は原子力関連の施設で有名だが、実際には再生可能エネルギーの発電設備のほうが活発に動いている。風力のほかに太陽光発電も急速に拡大中だ。2015年10月に運転を開始した「ユーラス六ヶ所ソーラーパーク」は現時点で日本最大のメガソーラーである(図7)。
建設した場所は国の石油備蓄基地や原子燃料サイクル施設などが立地する工業団地の「むつ小川原(おがわら)開発地区」の中にある。2カ所に分散する合計250万平方メートルの用地に、51万枚の太陽光パネルを設置した壮大なプロジェクトだ(図8)。
発電能力は148MWに達して、送電できる電力は最大で115MWになる。年間の発電量は3万8000世帯分の使用量に匹敵する規模で、六ヶ所村の総世帯数(4600世帯)の8倍以上に相当する。運転中の風力発電所の電力を加えると、地域の需要をはるかに上回る電力を再生可能エネルギーで供給できる。
そこで青森県は再生可能エネルギーの電力を利用してCO2(二酸化炭素)フリーの水素を製造する事業を計画中だ。六ヶ所村にある風力発電所の電力で水を電気分解して水素を作り、近隣のLNG(液化天然ガス)基地で発生する冷熱で水素を液化する。むつ小川原開発地区には大型の港もあるため、液化した水素をタンカーで首都圏に運ぶこともできる(図9)。
青森県は2030年までに一連の事業が稼働することを想定している。全体で新規の雇用を600人ほど見込めるほか、水素の製造から派生する農業や観光事業を含めると2000人規模の雇用の創出を期待できる。長年にわたって原子力に依存してきた地域が再生可能エネルギーと水素エネルギーの供給基地に転換できる可能性が浮上してきた。
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