風力発電の導入量が全国1位、日本最大のメガソーラーも動き出す:エネルギー列島2016年版(2)青森(4/4 ページ)
青森県ではエネルギーの自給率と利用効率を高めて化石燃料の依存率を引き下げる「トリプル50」を推進中だ。風力と太陽光を中心に再生可能エネルギーの発電量を2030年度までに5倍に増やす。巨大な風力発電所とメガソーラーが運転を開始して、電力から水素を製造するプロジェクトも始まる。
木質バイオマスの電力を地域で小売
青森県では太陽光と風力発電の導入量が多いが、バイオマス発電も急速に拡大中だ。固定価格買取制度の認定を受けた発電設備は合計で138MWにのぼり、全国で第6位の規模がある(図10)。
南部の平川市では「津軽バイオマスエナジー」の木質バイオマス発電が2015年12月に運転を開始した(図11)。特産品のリンゴの栽培過程で剪定(せんてい)した大量の枝を燃料に利用する点が特徴だ。青森県ならではの取り組みとして注目を集めている。
発電能力は6.25MWで、1日24時間の連続運転で年間に330日の稼働を予定している。年間の発電量は1万4000世帯分の使用量に相当して、平川市の総世帯数(1万2000世帯)を上回る規模の電力を供給できる。
この木質バイオマス発電は森林資源とエネルギーの地産地消が大きな目的だ。発電事業を運営する津軽バイオマスエナジーには平川市も出資して支援する。発電設備に隣接して木質チップの加工工場も新設した。地元の森林事業者から原料の木材を調達して、チップの加工から発電まで一貫処理できる体制ができている(図12)。
それだけにとどまらない。バイオマスで発電した電力を地元で販売するための小売電気事業者も設立した。その名も「津軽あっぷるパワー」で、当初は公共施設から電力の供給を開始する(図13)。今後は電力の小売が自由化された一般家庭に販売することも検討していく。
将来は電力だけではなくて、バイオマス発電に伴って発生する熱や蒸気を地域に供給する構想もある。熱の供給先は近隣の農業や養殖業などで、蒸気の供給先は発電所が立地する工業団地内の工場を想定している。バイオマス発電を中核に地域の資源とエネルギーを循環型で活用できる町づくりを進めていく。
2015年版(2)青森:「再生可能エネルギーと原子力が共存、半島に集まる巨大な発電所」
2014年版(2)青森:「風力発電が半島から沖合へ、32基の大型風車を太平洋上に展開」
2013年版(2)青森:「風力発電で先頭を走り続ける、六ヶ所村に並ぶ大型の風車と蓄電池」
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