東京電力のスマートメーター遅延が拡大、最大2カ月も先送りに:電力供給サービス(2/2 ページ)
小売の全面自由化が始まって2週間が経過したにもかかわらず、東京電力のスマートメーターの設置状況が改善できていない。3月末の時点で17万台の設置が遅れたうえに、4月以降も対応が追いつかず、半年後の9月に解消できる見通しだ。その間に契約を変更した場合には最大で2カ月の遅れが生じる。
一部のスマートメーターは10月以降も遅れる
東京電力パワーグリッドは小売電気事業者にヒアリングを実施して、今後の契約変更の見通しをもとに、スマートメーターの設置時期がどのくらい遅れるかを想定した。東京電力の小売部門(4月1日から東京電力エナジーパートナーに分社)が需要家とのあいだで契約を変更した分を含めて、3月には60万件を超えたが、4月は40万件と少なくなる見込みを立てている(図3)。
さらに5月以降は月間に15万件の契約変更が成立する想定だ。3月と4月は小売電気事業者が事前に申し込みを受け付けていた分が数多く含まれているためである。ただし「小売全面自由化が開始されて間もないことや、各小売電気事業者の今後の販売戦略等に大きく左右されることから、そもそも想定は困難であるが、一定の仮定に基づき想定した」もので、大幅に変動する可能性は十分にある。
この想定に対して、実際に設置できるスマートメーターの台数が上回るのは5月に入ってからになる。4月〜9月に見込まれる契約変更は合計115万件で、その間に129万台のスマートメーターの設置を完了できる見通しだ(図4)。3月末の時点で遅延していた14万台を含めて、9月中に解消できるかどうかギリギリの状況である。
月別に見ると、4月〜6月に契約を変更した場合には最大で2カ月も遅れてしまう(図5)。7月と8月の契約分も翌月にならないとスマートメーターの設置は完了しない。しかも電力の使用量が多い家庭や商店に設置する120A(アンペア)のスマートメーターの調達が間に合わず、5月から数が足りなくなる見込みだ。メーカーに増産を依頼中だが、10月以降も遅延が発生することは避けられない状態にある。
このように膨大な件数の遅延が生じていることに対して、東京電力パワーグリッドは「電気をお使いになる皆さまに不利益が生じないよう、最大限考慮してまいります」と抽象的な説明に終始している。実際にスマートメーターを利用したサービスを受けられない需要家にどのような補償内容で対応するのかを早急に公表して、需要家のみならず小売電気事業者にも不利益が生じないように配慮する必要がある。
関連記事
- 東京電力が大失態、スマートメーターの設置に大幅な遅れ
小売全面自由化を前に東京電力が混乱をきたしている。2月と3月に合計93万台のスマートメーターを設置する計画だったが、最新の見通しでは75万台しか設置できない。工事会社と契約の未締結や作業員の離散が原因だという。小売電気事業者に対して契約変更を遅らせるよう異例の依頼を出した。 - 東京電力のスマートメーターさらに遅れる、4月1日に間に合わないケース多発も
小売全面自由化に水をさす事態が広がっている。契約変更に必要なスマートメーターの設置が東京電力の管内で大幅に遅れて、自由化が始まる4月1日に間に合わないケースが大量に発生する見通しだ。4月1日までに設置が必要な32万台に対して、3月21日の時点で5万台強しか設置できていない。 - 電力の契約数を伸ばす東京ガスと大阪ガス、セット割引と電源構成をアピール
家庭向けの電力販売の申込件数で東京ガスと大阪ガスがリードしている。すでに東京ガスは24万件を超えて、大阪ガスも3月末に10万件を突破した。電力と都市ガスのセット割引を訴求する一方、CO2排出量の少ないLNG火力と再生可能エネルギーによる電源構成のメリットも強調する。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.