再開発で生まれる木くずから電力、横須賀市で都市型バイオマス発電開始:自然エネルギー
再生可能エネルギーとして注目を集めるバイオマス発電。その課題となるのが燃料調達の問題である。特に木材を使用する木質バイオマス発電では、都市部での実現が難しいとされてきたが、これに挑戦する動きが具体化している。横須賀市での都市型バイオマス発電の建設である。
バイオマス発電は、育成時にCO2を吸収してきた生物由来の燃料を使い、燃やして発電を行う。燃料を燃やすときにはCO2を発生するが、同燃料が吸収してきたCO2を考慮し持続可能性を持つエネルギーとして認識されている。
バイオマス発電の大きな課題となっているのが燃料調達である。バイオマス発電は「燃料がCO2を吸収してきた」ということがポイントとなっているため、燃料については証明書などが必要となる。これらの条件を満たした燃料を安定的に調達できるかどうかというのが難しい点だ。そのため、バイオマス発電を行うところは燃料を取り扱う企業が始めるケースが大半だ。例えば、燃料に木材を使う木質バイオマス発電では、林業など常に豊富な間伐材などを用意できる企業が行うケースが多い。さらに、山林などの近くで行う方が不要なコストがなくなるため、都市型での発電は、下水汚泥系のものを活用することが多かった。
東京五輪による再開発で首都圏の廃材は増える
これらの課題を乗り越え、都市型の木質バイオマス発電に取り組もうとする動きが、今回の横須賀市での取り組みである。取り組むのは廃棄物処理事業者であるタケエイだ。
同社では既に東北地方において、森林間伐材を燃料とする木質バイオマス発電を3プロジェクト稼働させている。ただ、今回は森林バイオマス発電ではなく、首都圏および近郊の自治体・造園業・建設業から排出される伐採木、剪定枝、森林間伐材などの木質資源を主燃料とした発電を行う「都市型バイオマス発電」を目指していることが特徴である(図1)。
タケエイは、以前から首都圏を中心に、建設現場から排出される廃木材の再資源化を行ってきた他、2014年10月には「タケエイグリーンリサイクル(当時の富士リバース)」(山梨県富士吉田市)を子会社化し、地方自治体・造園業・建設業から排出された伐採木・間伐木・剪定枝などの再生資源化・再生エネルギー原燃料化の事業にも本格参入している。これらのバイオマス発電の燃料となる木材の調達ルートを豊富に持つ他、今後、東京五輪などを見据え首都圏の再開発が進むことから排出される廃材が増えることも見込めるため、都市型バイオマス発電事業を開始する。
燃料となる木質資源は、バイオマス発電所内に併設される、木質燃料製造施設(廃棄物処理施設)で加工される燃料チップの他、子会社のタケエイグリーンリサイクルと地元のチップ製造業者、木材加工業者で加工された燃料チップを仕入れるという。さらに、これまで最終埋立処分されるなど、有効活用されることのなかった廃棄物由来の廃プラスチックを原料に、タケエイ川崎リサイクルセンターにおいてRPF(産業系廃棄物のうち、マテリアルリサイクルが困難な古紙および廃プラスチック類を主原料とした高品位の固形燃料)化したものを、燃料として活用するという。
発電した電気は、小売電気事業者(東京電力を含む)に売電する予定。さらに今後、地元での活用を前提に地産地消型エネルギー実現に向けて、地元での小売電気事業への参入も計画するとしている。運転時間は24時間で運転日数は330日を計画。発電量は約6800kW(キロワット)で建設費は40〜45億円程度を見込む。2018年ごろに稼働を開始する計画だ。
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